執拗な誹謗中傷にあっても「この戦争に関する発信はやめない」 東野篤子教授が貫く思い
国際政治学者で筑波大教授の東野篤子さんに対する誹謗中傷コメントをSNSに投稿したとして、侮辱罪に問われた40代男性に対して、水戸簡裁は10月、罰金30万円の略式命令を出した。 驚くべきは、この男性が茨城県警の現役の警察官だったことだ。男性はXに「見た目からしてバケモノかよ」と東野教授の画像を添付して投稿していた。しかし、これで一件落着ではなく、東野教授に対する誹謗中傷は今も続いている。(ライター・梶原麻衣子)
●誹謗中傷していたのは現職の警察官だった
――投稿していたのが茨城県警の現職警察官だったことに、驚愕しました。 東野:問題の投稿は2023年6月にあり、2023年秋ごろには開示請求をしていたのですが、私は当時、海外に在住していました。海外にいると警察に赴いて調書を作成することもできず、刑事告訴もできないため、帰国後の今年4月に刑事告訴に踏み切りました。結果的に11月に略式起訴となり、相手は侮辱罪で30万円の罰金刑を受けました。 昨年末時点で開示請求が認められていたことは相手にも郵送で伝わっていたはずですが、それでも先方は中傷をやめませんでした。さらに私の勤務先に対する危険な書き込みもおこなっていたため、刑事告訴に至りました。相手は和解金による解決を求めてきましたが、一切応じませんでした。 告発当時、相手は生活安全課の警部でしたから、こちらの個人情報を容易に入手できる状況にあったのです。この点、茨城県警にも実際に相手が私の個人情報を得たかどうか等を確認していたのですが、結局、県警からの返事はないままです。 インターネット上の誹謗中傷対策を担っている警察が被害者よりも加害者である身内を守るという構図がある中で、警察が今後どの程度、中傷対策を講じられるのか疑問です。
●「それぐらいのことで」告訴するのか
東野:私が本件に関連して非常に残念に思ったことは、この刑事告訴に関する情報を断片的にしか把握していない人々が、「東野は多少容姿を貶されたぐらいで刑事告訴した」のであり「言論の自由を抑圧した」と私を非難したことです。容姿などの属性に対する中傷を「言論の自由」の範疇におさめて認めようとする主張なのでしょうか。 この刑事告訴に関して、報道で出てきた情報はごく一部です。表には出せない、私の口から説明できない情報も沢山あります。 それにもかかわらず、「有名税なのだから、多少の悪口はガマンしたらどうだ」、「自分に都合の悪いことを、刑事告訴によって隠そうとしているのではないか」などの憶測やほのめかしを、一部の方々から執拗に書き込まれました。 こういったいやがらせは今でもネット空間に残されており、私の社会的評判を毀損しています。 ――東野先生ご自身のnoteにもありましたが、引っ越しやお子さんの進学先の変更まで検討せざるを得ない状況にあると。 東野:子どもからすれば、「ネットで母を誹謗中傷していた人がいるのはわかる。その相手が県内に住んでいることも理解できる。しかしそれでどうして自分の進学先まで変えなければならないのか」と納得がいかないでしょう。しかし仮に子どもが標的にされるようなことがあれば、一生悔やむことになります。