<戦後70年>“幻の大本営”に学ぶ戦争の不条理 長野・松代
ある場所では、地下壕内の岩に書き付けられていた「大邱」と読める文字の写真をガイドが示し「何か分かりますか?」と小学生らに質問。「これはおそらく韓国の大邱という都市の名前でしょう。当時の朝鮮から来ていた人が何かの動機で岩に書き付けたのでしょう。文字はトンネル内で照明に使っていたアセチレンガスのすすを使って書いたようです」と説明していました。 見学を終えた人たちは感想をアンケート用紙に記入。長野県内の30代の女性は「戦後の平和のありがたさや戦争の厳しさを学んだ。ほかの子どもたちも見に来てほしい」、県内の女子小学生は「朝鮮の人たちなどが9か月もの間に造ったのは大変だったと思う。今日教えてもらったことを忘れずにいたい」とそれぞれ書き込んでいました。
実態解明が難しい朝鮮人労働者の問題
松代大本営の工事は極秘のため「倉庫工事」とされ、このうち政府機関、放送、通信関連の施設が入る象山の地下壕は「イ号倉庫」として計画の80%、トンネル長約5900メートルが終戦までに完成。また、近くの舞鶴山には天皇御座所、皇后関連施設、宮内省、大本営などが入る堅固な建物を「ロ号倉庫」として建設しました。現在は気象庁の松代地震観測所になっています。このほか食料庫、送受信施設など合わせて12の施設を隣接する須坂市や小布施町などに分散建設の予定でしたが、ほぼ完成した施設のうち最も規模が大きいのがこの「イ」「ロ」2施設です。 朝鮮人労働者は6000人いたとの見方や、事故などによる犠牲者も出たとされていますが、工事関係の資料はほとんど残されていないため、確実なことは分かっていません。また、朝鮮人労働者については一時「強制連行されてきた」との見方が伝えられましたが、国による日本人、朝鮮人を含む「徴用」(賃金支払いのある国による強制的な勤労動員)や建設会社の採用もあったのではないかと論議になりました。 このため象山地下壕にある長野市の説明板では「多くの朝鮮や日本の人々が強制的に動員されたと言われています。なお、このことについては、当時の関係資料が残されていないこともあり、必ずしも全てが強制的ではなかったなど、さまざまな見解があります。」としており、極秘工事の実態解明の難しさを示しています。