新潟日報、生成AIで売上高100億円狙う 記事データ使い集客支援も
鶴間社長が取締役会で新規事業を提案したのは6月下旬。「石山さんとの会合から間を空けずに役員会にかけた。新潟日報の佐藤明社長を含め、役員陣は総じて『価値ある取り組みだ』と考えたと思う」と鶴間社長は振り返る。明確に反対する役員はいなかったという。 これまで数十社から問い合わせが来ており、地域でのニーズはかなりありそうだという。「現段階では県内の中小企業よりも中堅企業が多い」と佐藤妙子・新潟日報生成AI研究所執行役員主任研究員は説明する。佐藤氏は「新潟県の花角英世知事にも話したが、とても関心を持ってもらった」と話す。 いわゆる「年収103万円の壁」を引き上げて地方税収が減った場合、生成AIの活用で行政コストを減らし、対応する可能性もあるという。また、県議会で使う資料の作成に生成AIを活用すれば、県職員の負担を軽減できそうだ。 ●第1号ユーザーはダイニチ工業 最初のユーザーは暖房機器や環境機器などを手掛けるダイニチ工業。同社の野口武嗣取締役はこう話す。 「システム開発部が、生成AIの導入でどのようなことができるのかを考えていた。重視したのは安全性で、入力したデータの流出がないこと、アウトプットの内容が正しいかどうかなどを検証していた。そのタイミングで、今回の新潟日報生成AI研究所による提案をもらった。新聞記事の裏付けによるアウトプットとのことで安心できると感じた」 新潟日報でも、生成AIの活用について検討している。過去記事を基に、どんな記事にニーズがあるのかを探ったり、企画のアイデア出しに利用したりできる見込みだという。24年6月に生成AI利用のガイドラインを作成し、制度面での環境を整えた。ただし、記事作成に生成AIを活用することは禁止している。 生成AIを利用した新潟日報の新規事業は、他の地方新聞社の参考にもなりそうだ。実際、多くの地方紙からの問い合わせが来ているという。
多田 和市