なぜプロ野球では内紛劇が起きるのか?
長いシーズンを閉ざされた世界の限られた集団で過ごし、個性と人なみ外れた能力に恵まれた人間が集まるのだから感情のぶつかりあいや人間関係の摩擦が起きることは、ある意味当然かもしれないが、パターンはおおよそ2つに分類される。 チームのベテラン、もしくは中心選手が、監督、コーチの指導法や起用法に不満を抱いて批判する場合、あるいは、そういう不満が蓄積して爆発する場合、逆に監督、コーチが、選手側の姿勢や態度に不満を抱き、信頼関係をなくして感情をぶつける、あるいは、チームの士気を考慮して外すなどの2つのパターンだ。 内部衝突が表ざたになった場合、ほとんどチーム運営上、選手側が処罰の対象となるが、これらの内紛劇が起きる背景として見逃せないのが、監督、コーチと選手のヒエラルキー、信頼関係の問題である。 現役時代にそれほどの実績のない人や、選手としての野球への取り組みが立派とは言えなかったような人が監督、コーチになった場合、現役時代を共に過ごし、その人間性や姿勢をつぶさに見てきた選手側が、「言うことに耳を傾けない」という現象がしばしばおきる。 また監督、コーチになった途端に、いきなり態度が豹変する人も少なくなく、「現役時代はやってなかったくせに」と、選手側の気持ちが離れる場合もある。指導者よりも実績のある選手側が、「野球を知らない」と、見下すような形で信頼関係が崩れることもよくある。 すると、それを感じ取った監督、コーチ側が、ますます高圧的な態度に出ることにつながり両者の関係は、さらに悪化する。広岡氏が指摘するようにコーチングを学ぶことなく「好き嫌い」「現役時代の経験だけ」で行動する指導者側の素養の問題も、内紛、衝突が起きる下地にあるのだ。 そして、たいていの場合、ベテラン選手や外国人選手が、この手の問題を引き起こす。組織上あってはならない「選手側の勘違い」も、見過ごすことはできない。 弱小球団の再建で知られる星野仙一・楽天副会長は、それらの選手側の「勘違い」が「勝てないチームの温床」だと考え、トレードや戦力外、補強などを積極的に仕掛けて、選手を入れ替えチームの空気を変えることを再建のポイントとしてきた。 内紛、衝突問題の、いきつくところは、チームの成績にまで、つながる放置できない問題なのである。