住宅ローンのフラット35、金利「独歩高」の忍耐期、機構が「身銭」を切り変動金利型に対抗へ
住宅金融支援機構が提供する、長期固定金利の住宅ローン「フラット35」の利用が低迷している。2023年度の利用戸数は、2008年度以来15年ぶりの低水準となる見通しだ。見かねた機構は「身銭」を切って金利を引き下げ、根強い人気を誇る変動金利型との競争に参戦し始めた。 【図解】フラット35の利用戸数は15年振りに5万戸割れか 「昨今の金融情勢が続く限り、落ち込みは避けられない」。機構の幹部は肩を落とす。 ■足元は変動金利型が優勢 フラット35の利用戸数は、2023年4~12月の累計で約2.5万戸だった。2024年に入って復調しているものの、通期でも4万戸をやや超える程度となる見通しだ。5万戸割れは2008年度以来となる。
足元の住宅ローン市場は、低金利が売りの変動金利型が優勢だ。機構の調査によれば、2023年4~9月に住宅ローンを利用した人の74.5%は、変動金利型を選んだ。前年同期の69.9%から上昇している。 かつてフラット35は、金利の先高観を懸念する顧客からの底堅い需要があった。ところが、2022年からフラット35の金利が目に見えて上昇し始め、今年3月時点での最頻値は1.84%(返済期間21年~35年)。0.5%前後で横ばいを保つ変動金利との差が鮮明となり、顧客に敬遠されている。
フラット35の独歩高の背景にあるのが長短金利差だ。固定金利型の住宅ローンは長期金利を、そして変動金利型は短期金利を参照する。 長期金利は2022年から上昇が顕著になり、2022年末や2023年7月、10月と日本銀行が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の運用を柔軟化し、長期金利の上昇を容認したことで拍車がかかった。対照的に、短期金利はマイナス圏に抑え込まれ続け、長短金利差は拡大の一途をたどる。
■固定と変動の金利差は縮まりそうにない 日銀はこのほど、マイナス金利政策の解除を決断したものの、固定と変動の金利差は当分縮まりそうにない。 住宅ローン比較サイト「モゲチェック」を運営するMFSの塩澤崇取締役COO(最高執行責任者)は、「変動金利は競争が激しく、各行は金利を上げられないだろう。一方、フラット35のような長期固定金利も、アメリカの利下げが始まるまでは高止まり状態が続く」と話す。 3月21日には、SBI新生銀行が住宅ローンの変動金利を年0.42%から0.29%へと引き下げるキャンペーンを打ち出した。