名スカウトが昨季ドラフトを総括採点。成功した球団はどこか?
ブービーグループに仕分けられたのは、広島、ヤクルト、ソフトバンクの3球団。そして最下位は、本来はドラフトに定評のある日ハムということになった。 「広島の加藤は、制球難が治らず、ヤクルトの星はパンクしてしまった。ただ、広島の消化試合に出てきた日大三高卒の捕手、板倉は面白い打撃をしていた。ソフトバンクは田中正義が出てこなかったことがすべてだろう。2位の古谷優人(江陵高)の将来性や、日ハムも、高卒左腕の堀が伸び幅があるところを見せてくれたが、今年だけで見れば、成功とは言えないドラフトだった」 広島の外れ1位の加藤拓也(慶大)は、4月7日のヤクルト戦とのデビュー戦で9回一死までノーヒットノーランを続行。衝撃的なプロ初勝利を手にしたが、制球難が克服できず、その1勝だけに終わった。 ヤクルトは、2位の星知弥(明大)が、中継ぎからチーム事情で先発に押し出されて150キロ級のボールが光ったが、最後は肘を疲労骨折して、数字は4勝7敗。そして、昨季のドラフトの総括する中で、最悪の誤算は、5球団が1位で競合した田中正義(創価大)だろう。 キャンプで右肩に違和感を覚え、以降、シーズンのほとんどを3軍ですごした。9月23日のウエスタンリーグ阪神戦で、やっと2軍戦に初登板して、3回2安打2失点だったが、対戦した当時の阪神・掛布2軍監督は、「まだバランスが悪く、本来の彼が持っている球威が戻っていなかった。特に走者を置くとガラっと投球内容が変わってしまっていた」と、厳しい見方をしていた。 苦しみながら4勝したロッテ佐々木の方が、まだ片鱗は見せたが、なぜ「即戦力で10勝は堅い」と予想されていた2人は、期待を裏切ったのだろうか。 「これがプロとアマの決定的な差。プロの143試合を戦いぬく基礎体力、馬力がなかったのだ。田中は、入団前からルーズショルダーの噂があったが、春先に肩を故障してから時間がかかった。ソフトバンクの凄いメンバーと一緒にブルペンで投げて気後れしてしまったのかもしれない。佐々木は細かいコントロールはなく、球威で押さえ込むタイプだったが、プロのキャンプ、オープン戦で疲れ果て、開幕の頃には150キロが出なくなっていた。これは田中、佐々木の2人に共通することだが、プロではクイックや牽制など走者を置いたときの細かい技術を要求されるが、その対応に苦労して本来のピッチングを見失った。メンタル面でも弱さが出たのかもしれない。だが、2人の潜在能力は疑いようがない。1年目に出てこなくとも、来年、再来年に出てくればいいだけの話。いい勉強になっただろう。いずれ出てきますよ。プロなんて、引退するときに笑って辞めれるかどうかが勝負なんだから」 過去に鳴り物入りでプロの世界に入った選手の栄光も挫折も見てきた片岡さんは、こう分析してエールを送った。そして、また10.26から新たなドラマが始まるのである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)