CBの視界から消えて急所を突く――日本代表FWがオランダで魅せるストライカーの真髄。「最後はコイツのとこに来る、という印象があるはず」【現地発】
「俺が入ることで『ゴールへの迫力』『ゴールの匂い』を生みたい」
試合の分岐点は64分、PECズウォーレの左SBルトンダがこの日2枚目のイエローカードを受けて退場したこと。その後、一方的にNECが押し込んだが、ストライカーの小川にとってはゴール前でのスペースが無くなることにつながった。その数少ないボールタッチのなかで、小川は相手CBを背負いながら何度かポストプレーでチャンス一歩手前のお膳立てをした。 「ゴール前で2回ぐらい、いい形でポストプレーがあった。ああいったなかで『前向きの選手』を作り出せるというのは自分の良さでもある。あれがアタッキングサードにグッと入ってくるひとつのオプションになると思うんですよね。サイドからサイドずっと回していても、結局いい状態でクロスを上げれませんので。 最後はクロスから点を取りましたけど、ああやって自分が囮になって無理やり中にギュッと入っていくのは大事だと思う。ああいうのもひとつ自分の良さとして今後やっていけたらなと思います」 第2節・AZ戦の66分、今季初めて小川がピッチに入るとNECの前線の動きが明らかに変わった。わざとオフサイドポジションに居残って、プレーの流れのなかからオフサイドが消えて小川自身がノーマークになる動き。CBの視界から消えて急所を突く動き――。今まで当たり前だと思っていたことが、彼が束の間欠場したことで実は、NECにとってかけがえのない武器だったことに気づかされた。 「ゴール前というのは、僕は大して点を取ってないけれど――、昨季ある程度結果を残したから、マークする相手が『最後はコイツのとこに来る』という印象は持ってると思う。そういった意味で、僕が入ることでボックスの中での脅威というのが生まれ、ウインガーやトップ下の選手が空いてくる。まさに今日、最後の得点シーンは僕が入ったことで生まれたゴールだといっても過言ではないと自分でも思ってます。 俺が入ることで『ゴールへの迫力』が生まれたり、『ゴールの匂いというのがするな』という風になったりすれば、アピールになると思う。次の試合でしっかり得点を取りたい」 今季の目標は15得点。昨季はその数字をオランダリーグ11ゴール・KNVBカップ戦4ゴールで達成した。 「目標の15ゴールはリーグ戦だけの数字ですよね?」。そう確認すると「もちろん! さらに上を目ざして20点取れたら最高だと思います」と答えて、次のように続けた。 「カップ戦でも昨季と同じくらい取って、決勝戦でフェイエノールトに勝ちたい」 昨季リーグ戦6位、カップ戦準優勝と好結果を残し、しかもプレー内容が良かったことから『草刈り場』になると思われたNECだが、主力ではここまでGKシレッセン(ラス・パルマス)、DFファン・ローイ(トゥエンテ)、MFシェリー(アントワープ)の放出に留まっている。 チーム、そして小川、佐野ら個人としても本調子から程遠いが、昨季の自信を糧にこれから仕上げていくことだろう。 取材・文●中田 徹
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