次々に新設され、大半が消えていくアートアワード、18回目を迎えた「AATM」が支持される理由
■ 受賞者の“その後”を紹介 AATMの魅力はこうしたアワードの開催だけでなく、アワードで注目を集めたアーティストに継続的な支援を行い、作品発表の場を与えることにもある。AATMは「賞を与えて終わり」ではないのだ。継続的な支援のひとつのかたちが「Window Gallery in Marunouchi―from AATM」。2024年11月20日から2025年1月26日まで、東京・丸の内「行幸地下ギャラリー」を会場に、AATM2024受賞者の高田マル、朝井彩華、さらに過去のAATM参加アーティストで現在も創作活動を続けている田中彰、野原万里絵、山口由葉の3名を加え、合計5名の作品を紹介している。 2024グランプリ受賞者の高田マル。彼女は日記などの個人的な描写や記述をパブリックな場所に描いて他者に見せ、「絵を描くという行為とは何か?」という問いに対する様々な実践を試みるアーティスト。4月にAATMグランプリを受賞した作品《こわれながらうまれる(間違った言葉)》は半透明のビニールシートの上に白い絵の具で日記が綴られた作品。文字は剥がれやすく、展示中にパラパラと崩れ落ちていく。そんなはかなさが、プライベートとパブリックの間で揺れ動く心を表現しているようで、とても美しい作品だった。 今回の「Window Gallery in Marunouchi―from AATM vol.2」では、新作《わたし》を披露。8mmフィルムで撮影した映像から19コマを抜き出し、19枚の紙にプリントアウト。それぞれの紙の上にアクリル絵の具で文字を綴っている。19枚の連作となることで、喜怒哀楽ともいえる感情のリズムが見えてくるよう。これもまた記憶に残る作品だ。 会場で高田マルさんに話が聞けた。「AATMは審査員の方が大学の卒展に訪れ、完成した作品をその目で見てくれます。学生にとって大きな励みになる、とても貴重なアワードです。うれしいことに今年のAATMでグランプリをいただき、様々な人と知り合うきっかけが増えました。賞金よりも、それが一番の喜びですね。今回のWindow Gallery in Marunouchiは、ほかの受賞者たちとの共同展示。新しい刺激が受けられ、制作に対する考え方が広がったと思います」。 次々に新設されるアートアワード。だが、大半は数年のうちに消えてしまう。AATMには1年でも長く続いてほしい。アーティストも、アートアワードも、継続こそ力だ。 「Window Gallery in Marunouchi―from AATM vol.2」 会期:開催中~2025年1月26日(日) 会場:行幸地下ギャラリー(東京駅側) 開館時間:11:00~20:00(最終日は~18:00) 閲覧無料・会期中無休
川岸 徹