友だちを増やすために「趣味」を始めるのは間違い? 趣味を増やしても友人は増えない
あなたは「趣味は何ですか?」と聞かれて、堂々と答えられる趣味がありますか?「今は忙しいけれど、時間ができたらやりたい趣味がある」、という方も多いのではないでしょうか。多数の趣味を持つ作家・国文学者の林望さんは、「趣味は本気で取り組むからこそ楽しくなり、思いがけない自己実現にもつながる」と語ります。そんな林さんの著書『結局、人生最後に残る趣味は何か』より一部を抜粋して紹介します。 【書影】「趣味は本気で取り組むからこそ楽しくなる」多数の趣味を持つ作家・国文学者の林望さんが伝える『結局、人生最後に残る趣味は何か』 * * * * * * * ◆趣味は友だち作りの場ではない 趣味を始めようとする人の中には、友だちを増やしたいとか社交の機会を増やしたいという目的を持つ人がいます。 例えば、趣味であるところの草野球よりも、試合の帰りに居酒屋に寄って仲間と楽しく飲み食いするのが楽しみ、というような話をよく耳にします。 案外、そういう考えの人が多数派なのかもしれませんね。けれども、人間関係を目的にした趣味はちょっとまた問題です。 なぜかといえば、趣味本来の目的から離れてしまうからです。 私自身は友だちを作るために何かを始めようとも思ったことがありませんし、友だち作りのために団体やサークルに入ろうと思った経験も皆無です。 いや、そもそも友だちを「多く」持つ必要なんてないと私は考えています。心を許して話ができる友人は、せいぜい一人か二人。 その他の人とは、必要に応じてつきあうこともありますが、それは通り一遍の世間づきあいで、しょせん形式的なものです。 だから、親しくもない人と頻繁に会って会話などせずとも、じゅうぶん楽しく生きていけます。相手にしてみても、たぶん同じような感覚じゃないでしょうか。
◆学生時代のOB会 大学時代はギタークラブに所属していて、何人かの親しい友人を得ましたが、それだって、卒業後五十年経った今にいたるまで、親しくしているのはたった数人だけです。 当時の仲間は数十人はいたはずですが、ほとんど音信不通になっています。でもそれは痛くもかゆくもなく、いっこうに寂しいこともありません。 高校の頃はラグビー部で一生懸命練習に励んでいました。ラグビー部の同期は十五人くらいいて、今でも年に一回はOB会を開催しています。 私のところにも毎回丁寧に案内の知らせが届くのですが、私は原則として参加していません。なぜかというと、いつも会場が新宿・歌舞伎町の居酒屋と決まっていて、お酒を飲んで、わいわいとやるのが目的らしいからです。 私は下戸で、酒飲みの相手、よっぱらいの繰り言につきあうのは、時間の無駄だと思っているので、それが昔の仲間であろうとなかろうと、酒を飲んで騒ぐような場所に行くのはまっぴらごめんというものです。 しかもその店が「喫煙可」とあっては決して参加しようとは思いません。
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