アスベスト調査の有資格者が建物「調査せず解体」させ書類送検 初事案か 不起訴処分も理由説明なし
建築物などの改修・解体時にアスベスト(石綿)調査を担う有資格者「建築物石綿含有建材調査者(調査者)」が調査をおこたって解体を不適正施工させる事件が起きていた。法で定められた有資格者が石綿調査をおこたって書類送検された初めての事案とみられる。(井部正之) 【関連資料】中皮腫死亡者数の推移と累計、日英比較
◆有資格者が石綿調査さぼって解体か
送検されたのは岐阜県高山市松之木町の海慎産業(会社名でなく屋号)代表の男性(51歳)。 高山労働基準監督署の発表によれば、被疑者の男性は、同市石浦町の木造建築物解体工事で石綿の事前調査が必要とされる2006年9月1日より前に建てられた建物を解体する際に建材に石綿が使われていないかどうか調査をしなければならないにもかかわらず、これをおこたって2023年12月6日から同12日まで労働者に解体作業をさせた疑い。5月15日に岐阜地方検察庁高山支部に書類送検された。 同監督署によれば、情報提供や通報ではなく監督署で発見した事案で、2023年12月12日に立ち入り検査して作業を停止させた。建物の階数や規模、実際に石綿含有建材があったのかどうか、同監督署は「お答えしかねる」。事前調査結果の報告状況についても同様だった。作業をしたのは3人の労働者という。 代表の男性が被疑事実を認めているかどうかも「ふだんからお答えしていない」(同)と回答が得られなかった。 監督署は、男性が「建築物石綿含有建材調査者」講習を修了していたことを認め、「調査者資格を持っていた。だから石綿の調査義務を認識している」と明かした。たしかに調査者講習を修了していたら、知らなかったとはいえないだろう。 2022年開設という海慎産業のウェブサイトにも「当社ではアスベストが使用されている可能性のある建築物について、解体前のアスベスト調査も実施しております」との売り文句がトップページ最初に掲げられた「ご挨拶」の2文目に記載されている。 建設業の許可の1つ「解体工事業」も保有しているとサイト上で説明され、実際に岐阜県の許可を持つことが国交省の検索システムでも確認できた。 じつはこの件は不起訴処分だったと7月13日、『中日新聞』が報じている。同紙によれば、岐阜地検高山支部が同12日に不起訴としたが、「地検は理由を明らかにしていない」(同紙)。 岐阜地検に取材を申し込んだところ、同地検の記者クラブに所属していないことを理由に拒否。ただし「新聞報道に間違いはない」と非公式に認めた。