明治大から「仮面浪人」の道へ 小遣い10万円で受験、早稲田大にリベンジ合格した秘訣は?
早稲田大だけに絞る
――どのように勉強を進めたのでしょうか。 予備校には通わず、なぜ早慶に合格できなかったのかを自分なりに分析するところから始めました。思い浮かんだ原因は2つ。まずは、親からも高校や予備校の先生からも指摘されるくらい、たくさん受験しすぎたことです。しかも学部が分散していたので、早慶の受験で大事とされる学部別の対策ができなかったことも大きかったと思いました。だから失敗を繰り返さないように、赤本を使った学部対策と、英単語帳などの暗記ものだけをひたすらやっていきました。 ――通っていた大学に、仮面浪人している人はいましたか。 それがけっこういたんです。大学の図書館で、受験用の有名参考書を開いている人も見たことがあったし、あとで知ったことですが、仮面浪人のコミュニティーもあったらしいです。僕はそこまで大っぴらにしなかったですね。また、そこまでの必死さもありませんでした。 ――とはいえ、大学の授業と受験勉強の両立は、難しそうです。 大学の授業がある日は、昼食後は大学図書館の隅の席で夕方6時ぐらいまで受験勉強をしました。授業がない日は、自分の部屋にこもって勉強していました。現役の時も予備校と自宅で12時間以上は勉強していて、むしろ勉強しないと気持ち悪いような感じだったので、苦痛には感じませんでした。ただ、時間とともに大学の授業が少しずつ面白くなってきて、「何のために再受験するんだろう」とふと自問自答した時はありました。 ――2度目の受験はいかがでしたか。 12月ごろに「受験料が1回3万5000円もする」ということにようやく気づき、迷った末、慶應義塾大学の商学部などはあきらめて、早稲田大学の教育学部、商学部、社会科学部の3つに絞りました。というのも、今回の受験は親の援助がなかったので、予算は貯金していたお年玉と、趣味で集めていたスパイクをフリマアプリで出品して得た10万円だけだったんです。早稲田大学は学部に関係なく受けられる授業が多いことから、学部にはこだわらず、興味のある3学部に出願しました。 結果は、教育学部と、「ロト6」という別名もあるほど運の要素が強い早稲田大学の社会科学部が合格でした。現役時代に割と仕上がっていたこともありますが、受験は運の要素も大きいです。その日のコンディションにも左右されるほか、得意な問題が出るかどうかにもよるので、どんなに準備万端整っている人でも好調不調は出ますね。 僕の場合、受験する頃には明治大学への愛着も湧いていたので、受験はやめてもいいかなという気持ちもありました。大学では単位もきちんと取っていたので、うまくいかなくても何とかなるという心の余裕も、いい方向に作用したと思っています。 ――親御さんの反応はどうでしたか。 合格がわかった頃、僕は「明治大学にそのまま残ってもいいかな」と迷いが生じ始めていたのですが、その迷いを断ち切ってくれたのが、ほかならぬ親です。思った以上に合格を喜んで「早く入学届を出してきなさい」と背中を押してくれた。そうして合格した早稲田大学の2学部のうち、より幅広い学問が学べそうな社会科学部への入学を決めました。 ――現在は3年生です。仮面浪人を振り返って、いかがですか。 僕はもともと心配性な性格で、だからこそ現役時代に13も出願してしまったわけですが、合格率わずか10%とか5%とか言われる仮面浪人を成功させたことは、自信になった気がします。早稲田大学は個性的な学生が多い大学で、たくさんの友達にも出会えて毎日が楽しい。結果的に良かったなと思っています。
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