160キロで農道を疾走!轟音響かせるラリーカーの迫力に度肝を抜かれた 最高峰の大会に53万人、愛知・岐阜で開かれた世界選手権をリポート
恵那市の小坂喬峰市長は「ラリーはサーキットのない街で開催できる唯一の世界選手権。風物詩じゃないが、毎年この時期になると多くの人に来てもらえるようになるのが理想だ」と期待を込めた。 ▽チームスポーツ 大会は、ラリー王国のフィンランドを拠点に活動しているトヨタ自動車のチームが1~3位の表彰台を独占する形で幕を閉じた。表彰台を逃しながらも存在感を示したのが、最上位のラリー1唯一の日本人ドライバーで5位となった勝田貴元選手(トヨタ)だ。 勝田選手は悪天候の中で行われた競技序盤でクラッシュし、車体の前方を大きく損傷した。大きなつまずきにもかかわらず、その後は鬼気迫る走りを見せて全22の区間中10区間でトップタイムを記録した。 トヨタチームのヤリマッティ・ラトバラ代表は「着実に成長している。気持ちの持ち方次第では、表彰台の常連になることも可能だ」と評価した。 損傷した車体を制限時間の40分以内で完璧に修復したメカニックたちにも称賛が集まった。その一人のヤンノ・オウンプーさんが開幕前にこう話していたのを思い出した。
「壊れた車が戻ってきたときは、正直言って高揚する。よっしゃ、仕事だぞと。われわれに与えられている時間は短く、若い頃は手が震えたが、いまはそう思えるようになった」 ドライバーが注目されるが、ラリーはチームスポーツだ。ドライバーの隣に座る「コ・ドライバー」はコースの情報がびっしり書かれたノートを見ながら指示を送る。走りの戦略を練るエンジニアもいれば、実際に整備に当たるメカニック、シェフや気象予報士もいて、サーカスの一座さながらに世界を転戦する。 チームオーナーであるトヨタの豊田章男会長は「ラリーにはドライバーだけでなく、多くのヒーローがいる。(ラリー・ジャパンは)そんな人たちをこんなに間近でみられるチャンスだ」と語った。 ▽経済振興に期待 今回は豊田市が主催したが、世界ラリー選手権の大会を自治体が主催するのは珍しいという。太田稔彦市長は手を上げた理由について「ラリーカーが走ることで改めて日本の原風景を国内外の人に知ってもらい、その価値に気づいてもらう機会にできると考えた」と話した。交通安全教育や産業振興にもつながる部分があり「公益性も高いと考えた」と強調した。 Jリーグ開催期間中に豊田スタジアム使うことに反対の声もあったが、スタジアムを所有する市が決断した。昨年の大会では観戦場所が限られることが課題となったが、今回はスタジアムの観客席から多くの人が迫力ある走りを目の当たりにできた。太田市長は「日本にラリー文化が定着しているとは言えない中で、裾野をどうやって広げるかということが大きなテーマだった」と語った。