160キロで農道を疾走!轟音響かせるラリーカーの迫力に度肝を抜かれた 最高峰の大会に53万人、愛知・岐阜で開かれた世界選手権をリポート
トヨタ自動車のモータースポーツ推進室で主任を務める中野雄介さんは「ラリーはその場所の風景と一緒に記憶されるものだ」と話す。 岡崎中央総合公園(愛知県岡崎市)では、この地域の名産品「八丁みそ」を熟成させる高さ約2メートルのたるを配置。ラリーカーが円を描くようにドリフト走行するようにコースをつくり、印象に残るように工夫した。 豊田市の三河湖付近は最もスピードを出せるステージの一つ。農道を160キロほどの猛スピードで駆け抜けたマシンは、熊野神社前の直角カーブ、通称「ジンジャンクション」を信じられない速さで曲がり、一瞬で消えていった。田んぼのあぜ道に陣取った観客は望遠レンズを向け、神社とラリーカーのベストショットを写真に収めていた。 家族4人で訪れた地元の男性は「モータースポーツはあまり見ないが、近くで開かれるということで見に来てみた。音が普通の車と全然違うし、ラリーカーの色もかっこよかった」と興奮気味に話した。
▽ラリーカーと街並みの非日常感 ステージ間の移動区間に当たる「リエゾン」も注目を集める。リエゾンはフランス語で「つなぐ」という意味。タイムアタックを走りきってもリエゾンを通って整備基地に戻ることができなければ、リタイアとなる。一般の車やバイクと同じく交通ルールを守りながらの走行となり、スピードを出し過ぎるとペナルティーが与えられる。ラリーカーを間近で見られ、赤信号では止まるため、ファンとの交流の場にもなる。 ラリー・ジャパンの全工程は1000キロ弱。このうち約700キロがリエゾンだ。主催者が発表した53万6900人の来場者のうち、37万4千人がリエゾンでの沿道応援だった。 最終日の19日の会場となった岐阜県恵那市の「岩村町本通り」は、最も絵になるリエゾンの一つだった。江戸時代に岩村藩の城下町として栄えた町で、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。古い町並みとカラフルなラリーカーのコントラストが非日常感を演出した。