セブン&アイ「外資の買収提案」と「国民のインフラ防衛」を両立する、たった1つの方法とは?
セブン&アイ・ホールディングスが、カナダの流通大手から友好的買収を提案されたのが8月。その後の買収額の引き上げに対抗するかのように、10月中旬には「2030年度に世界売上高30兆円」を打ち出した。セブン&アイの存在意義とは何だろうか? 社会的責務を果たすためには、今後、同社が国内事業と海外事業を分離する展開も考えられるはずだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫) ● スーパーやコンビニは「生活インフラ」だ セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、「2030年度に世界売上高30兆円」のグローバル戦略を発表した。今回の発表は、カナダの流通大手アリマンタシォン・クシュタールが、同社に対する買収額を引き上げたことへの対抗措置ともいえるだろう。セブン&アイHDの現経営陣は、自力で海外の収益を増やし、国内外のコンビニやスーパー事業を拡大する方針であると示したのだ。 日本企業であるセブン&アイは、まず日本社会への責任があるだろう。同社の重要な存在意義は、わが国の消費者が安心して食料や日用品を購入できるインフラを提供することだ。道路や鉄道と同じく、スーパーやコンビニは人々の生活に欠かせないものである。社会インフラとしての小売りビジネスを、いかに安定的に継続することができるか。それが、最も重要なはずだ。 仮に同社が海外企業に買収され、効率性を重視して国内のスーパーやコンビニを大幅に縮小することになると、消費者に多大な影響が及ぶ可能性は高い。地方では買い物難民が増えるだろう。海外では、小売企業は経済安全保障上の重要業種との考えにより、外資による買収を認めなかったケースもある。 今後の展開の一つとして、同社が国内事業と海外事業を分離する可能性もあるだろう。いずれにしても、日本の人々が安心して買い物できる体制を整えることこそ、セブン&アイが最大の強みを発揮する唯一無二のポイントだと考える。