国家安全保障をブロックチェーンとデジタル資産は強化できるか──CIA、FBI、シークレットサービス出身者が語る
規制の明確性があれば、国家安全保障におけるデジタル資産とブロックチェーン技術のメリットは飛躍的に拡大すると4人の国家安全保障の専門家は語る。 ◇◇◇ 国家安全保障の専門家として、我々は常に、リスク、緩和方法、安全に焦点をあてた視点で新興テクノロジーを捉えている。我々は米国政府において数多くの国家安全保障に関する役職で数十年にわたる経験を積んでいる。FBI(連邦捜査局)、CIA(中央情報局)、シークレットサービス、司法省、財務省などだ。我々の経験は、初のデジタル資産に関する違法金融捜査ユニットの設立から、CIAのサイバーインテリジェンスセンターにおける幹部職、国際組織犯罪グループの解体まで多岐にわたる。 米国の国家安全保障における優位性は、新しい技術を開発したり活用する能力に立脚しており、我々はブロックチェーンイノベーションプロジェクトに参加して、米国の国家安全保障がブロックチェーン技術の実装からどのように恩恵を受けることができるかについて経験を共有してきた。 ブロックチェーン技術が社会実装への未だ初期段階にあることから、政治家や一般市民に不正確な情報が大量にもたらされることがよくある。多くの場合は、この技術を理解できていない情報源や、時には不完全な事実や誤った分析によって話を進めようとする意図的な動きがそうした情報を発信している。 最も平たく言えば、ブロックチェーンは暗号化を利用した技術である。他の技術と同様に、どのような用途かは問わない。法定通貨であれデジタル通貨であれ、通貨は合法な活動と違法な活動の両方に資金を提供することに用いられている。
政策面について
政策の焦点を市場構造に集めることが、米国の戦略的な国家安全保障上の利益に繋がる。市場およびそこでブロックチェーンが果たす役割に関した多くの政策的アプローチは、市場の健全性やシステムリスクの軽減など複数の問題へ同時に対処しようとするあまり、広範に過ぎる。こうした幅広いアプローチを採ることによる課題は、ブロックチェーン技術、暗号資産、トークノミクスに対する理解不足が続くことによって悪化の一途を辿る。 米国が積極的にこの技術を国内で普及させるための仕組みを構築すれば、たびたびブロックチェーンとデジタル資産が色眼鏡で見られているように犯罪者や悪質な国際的プレイヤーの道具としてのみ機能するのではなく、強さと民主化の道具として活用できることに、政治家はすぐに気づくだろうと我々は心から信じている。 さらに、米ドルの強さは、米国のソフトパワーの中で最も強力なツールの1つであり続けている。民間部門が発行する、規制下で米ドルベースで完全に裏付けられたステーブルコインに人々がアクセスできるようにする規制枠組みを確立することは、経済成長の機会であるだけでなく、世界経済の大部分を米国の規制システムへと導き、米国の意のままに使える通貨および規制ツールを増やすための道でもある。 また、敵対国や同盟国の別なく世界の他の国々が金融システムにおけるデジタル資産の開発と採用を進めていることを認識するのも重要だ。一部ではこれを加速的に進めている中、米国の多くの銀行は1950年代のコードを使用して1980年代に導入されたソフトウェアプラットフォームに依存している。最近のインタビューで、欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁は、「私たちはデジタルユーロを、あらゆるデジタル決済に使用できるデジタル形式の現金として構想している」と述べている。2023年には、国家安全保障に資する意義ある規制枠組みが20か国以上で確立された。反対に、敵対的な国々は取り締まりのギャップを悪用し、つぎはぎの規則や市場構造の欠如によって生じる脆弱性を利用し続けている。 米商品先物取引委員会(CFTC)技術諮問委員会が強調したように、上記は国家の影響力と世界の準備通貨および取引通貨の提供者としての地位を弱め、違法な金融活動に対抗する能力を弱める一因となる可能性がある。