<拉致問題>安倍首相の訪朝は交渉打開の切り札となるか
外務省の伊原アジア大洋州局長ら日本政府代表団が平壌を訪問し、北朝鮮の特別調査委員会の責任者である徐大河委員長に会い、日本として拉致問題の解決を最重視しているという立場を伝えるとともに、調査の状況について聴取しました。2日間にわたって密度の濃い協議ができたようですが、日朝間の交渉は長らく膠着(こうちゃく)状態にあり、これから先もさまざまな問題が発生することが懸念されます。 小泉首相が2002年と04年の2回訪朝した例にかんがみ、安倍首相の訪朝により一挙に解決を図るべきだという声もあります。安倍首相の訪朝は切り札となるでしょうか。
12人の拉致被害者の安否
日本政府は17名の日本人を北朝鮮による拉致被害者として認定しており、そのうち5名については2002年に帰国が実現しました。しかしながら、残りの12名は安否不明です。さらにこの他、民間団体が調査した結果、北朝鮮による拉致された可能性があると思われる多数の「特定失踪者」がいます。 もし、日本政府が拉致被害者は健在であり、日本へ帰国できないのは北朝鮮当局によって拘束されているからだと確信しているのであれば、安倍首相が訪朝するのがもっとも効果的かもしれません。しかし、日本政府にはそのような確信があるとは思えません。推測にすぎませんが、もし確信しているのであれば、日本政府の動きは当然異なってくるでしょう。 日本政府が確信を持てないのは、12人の拉致被害者について北朝鮮側が「8人は死亡した。4人については入国したという記録がない」と説明しているからです。北朝鮮が提供した情報はそもそも限られていた上、内容的にも一貫性に欠け、疑わしい点が多々含まれており、北朝鮮の説明をそのまま受け入れることはできませんが、他方、北朝鮮が説明している事実関係が間違っていると日本側は主張したくても、根拠のないことを言うわけにはいきません。 これまでいろいろの人が見聞したことが伝えられていますが、日本政府を確信させるものはなかったのでしょう。さまざまな事情があるにせよ、北朝鮮の説明は国家として行なったことであり、それを否定するには根拠が必要です。