二番煎じはダメだが…異色編集者が教える「売れる本の法則」が目から鱗だった!
以前、『鉄道員裏物語』(2008年1月 著:大井良)や『パチンコ裏物語』(2010年7月 著:阪井すみお)といった業界裏話系の書籍を出版したことがあったんですが、その当時はそういうジャンルの本は少なかったこともあって、それぞれ5万部以上売れたんです。 その後、様々な版元から同じような裏話系の本が出るようになって、新鮮味が薄れていき、僕としては「もう業界裏話系の本はないかな」って思ってたんですけど、それこそ収録の最中に貴闘力さんと話していたところ、ぱっと『土俵裏』ってキャッチーなタイトルを思いついた。本のカバーに、このタイトルと貴闘力さんのビジュアルがあれば、売れるんじゃないかって。 仮に貴闘力さんご本人に読者があまり興味を持っていなかったとしても、業界の裏話に特化して掘り下げていけば、知的欲求を満たす本になり得ます。この見通しは成功して、『大相撲土俵裏』は後に文庫化したものとあわせて3万部近く売れました。 ● 立てた企画に類書がある場合に まずやるべきこととは? 「2匹目のどじょう」ではないが、ヒットを飛ばしたものを参考に、換骨奪胎して企画にするのはそう珍しいことではない。ベストセラーが出ると、似たタイトルの本がすぐに何冊も出てくるのはそのためだ。
とはいっても先行本を超える独自の企画性がなければ売れないのは当然のこと。見誤って大量の部数を刷ってしまい、大コケする版元がどれほど多いことだろう。が、草下氏が既存の本にアイディアを得て作った本はヒットが多い。その秘訣はいったいどこにあるのか。 そもそも類書はあまり売れません。先行本に比べて、基本的には数字が下がる。本が売れないなか、いまはヒット本といっても、そもそもの数字が小さいので2万部程度だったりする。その類書を作ったところで、8000部ぐらいが天井でしょう。 類書から企画を考えるのは後ろ向きだし、仕事としても、気持ちが盛り上がりませんよね。だから僕はあんまりやらないんですけど、著者と立てた企画で、類書がある場合には数字を見た上で実物を買って研究します。 どういうふうにこれが読者に刺さって、どういう結果が出ているのか。そういうことを含めて読むと、だいたい本の中に不満に思うところが見つかるんですよ。「自分が担当編集だったら、こういうふうにしたな」とか「もうちょっとこういう切り口あったら面白いな」とか。そこを広げるようにします。 だから、売れてない類書でも見ます。なんでダメだったか、どこがダメなのかを考えることは、すごく勉強になる。