空間デザインにも注目! “動く彫刻”を発明した巨匠アレクサンダー・カルダーの個展が開催中。
アメリカのモダンアートの巨匠アレクサンダー・カルダー。東京・港区の〈麻布台ヒルズ ギャラリー〉では、彼の代名詞である動く彫刻「モビール」を中心に、抽象絵画やドローイング、立体作品など約100点を見せる展覧会が開催中です。その見どころを展示空間のデザインを担当した建築家・後藤ステファニーさんのコメントとともに紹介します。 【フォトギャラリーを見る】 針金で繋げられた赤や黄色、白の幾何学的な金属板が、絶妙なバランスを取りながら、風を受けてゆらゆらと揺れ動く。いまではインテリア雑貨としても愛されている「モビール」は、じつはもともとアメリカの美術家アレクサンダー・カルダーが発明した “動く彫刻作品” だった。
カルダーは、モダンアートの巨匠である。従来、彫刻に使われてきた石や木や粘土などをあえて避け、針金や金属板など工業的な素材を積極的に彫刻に応用。1940年代以降は、巨大な野外彫刻に挑み、パブリックアートの分野でも活躍した。また、アメリカ航空会社「ブラニフ航空」の依頼のもと、ジャンボジェット機に直接絵を描いて飛ばすという「空飛ぶキャンバス」なる壮大なプロジェクトも行った。
1976年に没するまで、いくつも先駆的なことを行なったカルダー。だが、それでも美術史における彼の最も大きな偉業として語られるのは、やはり「モビール」を生み出したことだ。従来、動かなないものであった彫刻を、針金を使って動くようにするというそのアイデアは、「3次元である彫刻に、時間という概念を加え、4次元化した」とも「彫刻の大きなテーマであった “重さ” や “重力” から解き放った」とも言え、近代彫刻の大きな転換点となったからだ。 ちなみに、カルダーが動く彫刻を閃いたのは、ピート・モンドリアンとの交流も大きく関係し、その作品を「モビール」と名付けたのがマルセル・デュシャンだったことも興味深い事実である。
〈麻布台ヒルズ ギャラリー〉で開催中の『カルダー:そよぐ、感じる、日本』展では、この「モビール」を中心に、「モビール」との関連性を思わせる抽象絵画、また「スタビル」という動かない彫刻を含む約100点の作品を鑑賞することができる。ただ興味深いのは、タイトルに「日本」とあることだ。