「座っていることが楽だ」という考えは勘違い…北欧の企業の9割は「立って仕事ができる」施設を導入
【「立って」仕事をすれば健康で長生きできる】#2 近年の研究で、「座りすぎ」が体に深刻なダメージを与えることが分かってきた。 「座りすぎ問題」に関する著書もあり、この研究の第一人者である岡浩一朗教授(早稲田大学スポーツ科学学術院)は言う。 「座って仕事をするというのはただの習慣なだけですから、立って仕事をするようになれば、まったく苦痛ではなくなるんです。もちろん、腰痛や肩こりも改善します。たとえば私の研究室でも立って仕事ができる環境を導入していますが、誰も腰や肩が痛いとは言わなくなりました。最近は多くの企業がスタンディングデスクを導入したり、いろいろな取り組みをしています。ただやっぱり、多くの人が立つことに対してどこかネガティブな思いがあって、『座っていることが楽だ』と信じているんです」 特に日本では、学校での生活で「悪いことをすると廊下に立たされる」といった“風習”があったため、幼い頃から「立っていることは悪いことだ」と刷り込まれているケースが多いといえるかもしれない。 そうしたわれわれの思い込みが、立って仕事をすることを妨げる障壁になっているという側面もある。そして、そのような考えを持っているのは、会社の環境を整える裁量がある年配の人に多い、と岡教授は指摘する。 「若い人は感度がいいですから、自分たちが今後も長く働かなければいけない中で、『健康を守るためにも、そうした働き方をしたいけれど、上の人たちが気にかけてくれない』という声を企業の中でよく聞きます。そこは問題点のひとつですね。まだ昇降式のスタンディングデスクは価格が高いという現状もありますが、最近は電気を使わない油圧式のデスクもたくさん発売されているので、SDGsの観点からもおすすめできます。北欧では現在、オフィス什器を入れ替える時、企業のおよそ9割は立っても座っても仕事ができる設備を入れています。北欧は家具に対して非常に造詣が深く、文化も成熟していますからね」 次回は、最近発表された興味深い研究論文を紹介する。(つづく)