【便秘】食物繊維を取りすぎて悪化 隠れた“病気”とは? 消化器外科専門医が教える改善の“コツ”
食物繊維を摂取する際の注意点は?
腸閉塞(へいそく)の既往がある人や腹部手術後の人は、食物繊維の摂取に特に注意が必要です。腸が狭くなっている場合、食物繊維の過剰摂取は腸閉塞を引き起こす可能性があります。 腸閉塞の患者に対しては、腸管内に詰まった内容物を出すために「イレウス管」と呼ばれる管を鼻から挿入します。私が専攻医だったころ、腸閉塞の患者のイレウス管を洗浄すると、ワカメやシイタケなどが入っているのをよく見つけました。 ここで特に強調しておきたいのは、急に便秘になった場合や、便秘の症状が今までと異なる場合は、大腸がんの可能性も考える必要があるということです。特に、次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。 【大腸がんの疑いがある主な症状】 ・便が細くなった ・血便がある ・原因不明の体重減少がある ・便秘と下痢を繰り返す ・50歳以上で新たに便通異常が出現した また、過敏性腸症候群の人や慢性的な便秘の人も、急激な食物繊維の摂取は症状を悪化させる可能性があります。このような場合は、必ず主治医に相談の上、個別の対応を検討する必要があります。 腸に負担をかけない、消化の良い食事のことを「低残渣(ざんさ)食」といいます。特に腸閉塞が疑われる場合のほか、腸の検査前や手術前後などに用いられます。 低残渣食の場合、食物繊維の少ない食材を選び、消化しやすい調理法で調理します。具体的には、白米、うどん、パン(食パン)、豆腐、卵、脂肪の少ない肉や魚、煮込んだ野菜などが中心となります。野菜は繊維を断つように細かく刻んで、よく煮込むことがポイントです。 ただし、低残渣食は特別な場合の一時的な食事療法です。通常の生活では、十分な食物繊維を含む、バランスの取れた食事を心掛けることが大切です。 食事内容を変更する際は、体調の変化に注意を払い、必要に応じて医療機関に相談することをお勧めします。急激な変更は避け、徐々に体に合った食事スタイルを見つけていくことが、便秘改善の近道となります。 便秘は単なる症状ではなく、重要な病気のサインである可能性もあります。原因をしっかりと見極めた上で、適切な対応を取ることが大切です。
オトナンサー編集部