「余計なお世話」は顧客を減らす トライアルHD永田洋幸CDOが語る「店舗のメディア化」に大切なこと
■ お客さまの行動分析から見えた「面白いこと」 ──広告の無駄打ちを防ぐために、日々どのようなデータ分析をしているのでしょうか。 永田 お客さまが何を買ったかという「購買データ」に加え、どんな順番で店内を回っているかを示す「行動データ」の分析を行っています。 お客さまの行動分析をしていると面白いことが見えてきます。それは入店してからの行動は人によって全く違う、ということです。青果売場から見る人もいれば、お酒売場や惣菜売場に直行する人もいるため、実にさまざまなのです。 トライアルでは、定点カメラやセルフ決済機能付きのタブレットを備えたレジカートを活用して、購買データや行動データを可視化しています。データを通じて、これまで見えなかったもの見えるようになってくると、広告を配信すべきメディアが明確になり、お客さまごとに発信すべき情報や特典を変えることができます。 例えば、お酒を飲まないお客さまにビールのクーポンを配信しても喜んでもらえません。一方で、その方が来店するたびに惣菜の唐揚げを好んで買っていることを把握していれば、対応は変わるでしょう。アプリや店内のショッピングカートのタブレット画面を通して、唐揚げの割引クーポンを直接お届けできます。お客さまの目線から見ても、好みではないビールのクーポンをもらうより、ずっと嬉しいはずです。 ──リテールメディアのような取り組みは今後、リアル店舗をどのように変えていくのでしょうか。 永田 私たちが実現したいのは、リアル店舗をスマートフォンのような状態にすることです。スマートフォンはユーザーが使えば使うほどデータが蓄積されて、ムダ・ムラ・ムリといった非効率が減少し、ますます便利に使えるようになりますよね。 トライアルでも、データを蓄積しながら生成AIで最適解を見いだし、リアルの店舗のアップデートを繰り返したいと考えています。トライアルでは、テクノロジーを活用することでリアル店舗をより賢く、進化させ続ける「SMART STORE TECHNOLOGY」を掲げ、日々さまざまな挑戦を続けていきます。
三上 佳大