「弘前ねぷた」は「青森ねぶた」の脇役じゃない 思い込めてつくり上げられたスタイル、青森在住1年目の記者が触れた魅力
国際広域観光課の佐藤真紀課長はプロモーションの成果について「神戸ではねぷたの横でりんごジュースを販売したが、すぐに売り切れた。弘前にはたくさんの見どころがあるので、交流人口を増やせたらいい」と強調する。 ▽太鼓がうまくたたけない! 市役所の広場からは太鼓や笛の音が聞こえてくる。職員有志のはやし団体「弘前市七夕会」が練習していた。プロモーションで全国を回っているのも彼らだ。成田貴仁会長は「神戸や愛媛、北海道など、みんな反応が良い。ねぷたを見てびっくりされる」と話す。 遠征先ではいつも、ステージが終わったら地元の人と話をしている。去年の神戸を見に来ていた人は「弘前に行きます」と言って、本当に来てくれたという。「全国的には青森の方が有名だけど、一度は弘前にも来てほしい」と願う。 「弘前ねぷたの方が青森より歴史が長いんですから!」と力を込めるのは、太鼓をたたいて10年になるという市職員の黒田麻美さん。「300年の歴史に、ちょっとでも自分が関わっていることに喜びを感じる」と笑顔だ。
黒田さんに教えてもらい、私も直径が4尺(約1・2メートル)もある太鼓をたたいた。どんどんどーんどどんどんどん。リズムを取りながら強弱を付けるのが難しい。黒田さんは「ばちの面で打ってみて」とアドバイスをくれるが、うまくできない。「はやし方」のすごさがよく分かった。 ▽ヤーヤドー 8月1日、祭りの日を迎えた。立ち寄った喫茶店では「太鼓の音を聞くと血が騒ぐ」という会話が聞こえてくる。新型コロナウイルスの影響で規模縮小が続いていたが、今年は4年ぶりに制限がない開催。街中がそわそわしていた。いよいよ始まる。 「ヤーヤドー」の威勢のいい声と太鼓が響く中、極彩色の火扇が暗い城下町を次々と練り歩いていった。ゆっくり進んでは時折止まり、その場でくるくると回転する。こうすることで路地のどこからでも前後左右の面が見える。「鏡絵」と呼ばれる正面の図柄は川中島の合戦や日本武尊の武勇伝、三国志などさまざま。裏側の「見返り絵」には楊貴妃といった美人画などが繊細に描かれ、側面には町名や団体名が書かれる。