「弘前ねぷた」は「青森ねぶた」の脇役じゃない 思い込めてつくり上げられたスタイル、青森在住1年目の記者が触れた魅力
一方の弘前ねぷたは地域のコミュニティーを重要視し、町内がそれぞれ山車を出すことにこだわった。このため、制作費が人形より安い扇の山車が主流になったというわけだ。人形の山車もあるが、市民の祭りという柱は損なわれていない。 1980年には「弘前のねぷた」「青森のねぶた」が国の重要文化財に指定され、呼び名は固定化された。ちなみにねぷた、ねぶたは県内の津軽地方や下北地方で広く行われており、高さ20メートルを超える人形灯籠が市街地を練り歩く五所川原市の立佞武多(たちねぷた)なども人気だ。 ▽神戸から青森へ 私が弘前ねぷたに興味を持ったのは2022年6月。秋田県の大学を卒業して記者になり、最初に配属された神戸支局で取材した「弘前ねぷたin神戸2022」がきっかけだった。両市が相互に観光客を増やそうと開催したイベントで、色鮮やかな武者が描かれた8メートルの大型ねぷたがお目見えした。「ヤーヤドー」のかけ声とともに「ねぷたばやし」の生演奏が行われ、迫力と繊細さに圧倒された。小さな女の子が「お祭り見に行きたい!りんごジュースおいしかった!」と言っていたのがとても印象に残っている。いつか弘前で見てみたいと思った。
願いが通じたのかは分からないが、今年7月、本当に青森支局に転勤になった。祭りまでちょうど1カ月。事件・事故や各種行事の取材に追われる中で、実際の弘前ねぷたを見て記事にしようと考えて取材を始めた。 【「弘前ねぷたin神戸2022」の動画はこちら】 https://www.youtube.com/watch?v=BYO7_WH9u1s ▽全国回りプロモーション 訪れたのは弘前市役所。人口約16・5万人で、ねぷた以外では桜の名所・弘前公園やリンゴが有名だ。青森県で最初にリンゴを生産したのは弘前だという。 観光課の早坂謙丞課長によると、市は7年ほど前から大型ねぷたを折りたたんでコンテナに積み、全国を回るプロモーション活動をしている。 大きな目的はねぷたの見物客を含め市への来訪者を増やすこと。弘前は少子高齢化でねぷたの作り手や祭りばやしの担い手が減っており、観光客の減少で祭りの規模が小さくなれば、作り手、担い手もさらに先細りかねないとの懸念が背景にある。