真田広之、『SHOGUN 将軍』で称賛の声相次ぐ ハリウッドの“ヘンテコ日本”描写を軌道修正
1600年(慶長5年)の日本を舞台に、有力大名の間で覇権をかけた争いが勃発した戦国時代を描く人気ドラマ『SHOGUN 将軍』が、第76回エミー賞で最多25部門にノミネートされた。日本人が11名も候補に名を連ねる快挙を成し遂げ、世界中から絶賛の声が止まらない本シリーズで主演を務め、製作にも携わった真田広之が海外で高い評価を受けている。快進撃を続ける真田のキャリアを振り返りながら、海外での反応を紹介したい。 【写真】『SHOGUN 将軍』吉井虎永を演じる真田広之 日本で、『写楽』(1995年)や『リング』(1998年)などに出演して高い人気を誇っていた真田は、1999~2000年にかけてイギリスで上演されたロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの舞台『リア王』に、史上初にして唯一の日本人キャストとして出演。その後、トム・クルーズの主演映画『ラスト サムライ』(2005年)に出演したことを機に、本格的に活動の場をハリウッドに移す。 その当時のハリウッドは、まだ映画やドラマシリーズの出演者・スタッフの多様性が重要視されていない時代だった。そんな逆境をもろともせず、真田は『ラッシュアワー3』(2007年)、『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)、『モータルコンバット』(2021年)などの話題作や大作に次々と出演。アジア系俳優を代表する存在になっていった(※1)。 ハリウッドでトントン拍子にキャリアを重ねていったように見えるが、Backstageのインタビューで真田は、ロサンゼルスへ移住した当時はマネージャーも芸能エージェントもおらず、生きていけるのかどうか分からなかったと語っている。その発言から、異国の地で大きな賭けに出た真田が経験した苦労が伺えるのではないだろうか(※2)。 『ラスト サムライ』でハリウッドに足がかりを作った真田は、俳優として作品に出演するだけでなく、日本の歴史や文化のコンサルタントも務めるようになった。そして、エンターテイメント作品を通じて、日本大使的な役割も担う真田の集大成的な作品となったのが、他でもない『SHOGUN 将軍』だ。本シリーズでプロデューサーも兼任した真田は、登場人物の言葉使いから座り方などの細部にまでこだわり、舞台美術や小道具のスタッフも、日本の文化を理解している日本人を起用する徹底ぶりを見せた。 これまでにハリウッドで描かれた日本は、日本人から見ると「ヘンテコ日本」としか言いようがない描写や舞台美術、衣装などで溢れ返っていたが、まさに『SHOGUN 将軍』がその方向を軌道修正し、大きくハードルを上げたと言えるだろう。 Backstageは、そんな真田のたゆまぬ献身と努力が、ようやくハリウッドで報われたと指摘し、『SHOGUN 将軍』で見せた真田の静かなカリスマ性と威厳ある演技を称賛。本シリーズで真田は一言も英語を話さないが、日本語を理解しない海外の視聴者でも、その演技には引き込まれてしまうのではないだろうか。