フランスの美食観光プロジェクトを現地取材した、リヨンから「美しい村々」まで、食文化でめぐる旅
ヴァランスの食の魅力
リヨンと並ぶ「美食の街」として近年注目されているのがドローム県の都、ヴァランスだ。リヨンからは車で1時間半ほど、高速鉄道TGVの停車駅でもある産業都市で、ミシュラン星付きシェフのレストランは6軒ある。街の看板である3ツ星シェフ、アンヌ・ソフィー・ピックのレストラン「ピック」は、併設のオーベルジュでの宿泊、ビストロ「アンドレ」での食事など、予算に応じた使い分けができる。 ヴァランスではミシュランの1ツ星を獲得した日本人シェフ、伊地知雅氏のレストラン「ラ・カシェット」、ビストロ「ル・バック・ア・トレイユ」を訪れた。「ピック」などで修行を重ねた氏の料理は地産地消、地元の旬の食材を活用してシェフが「味覚、視覚、食感などバランスのいい料理を心掛けている」という通り、日仏料理文化の融合的な魅力も味わうことができ、この土地がより身近に感じられる。ビストロはグループでも利用が可能で、価格も手ごろ。予約は1カ月前まで受け付けているという。
世界最古級の洞窟壁画は「豊かな地」の証
この地域の「食」以外の観光で必見なのが、アルデーシュ県のショーヴェ洞窟だ。3万6000年以上前の洞窟壁画は、「ラスコーの壁画」より古い。この地域が先史時代から人々が暮らせる豊かな食材に恵まれた地であったことを伝える説得力がある。 サン・レメゼ近郊では6月末から7月にかけて広大なラベンダー畑の景観も楽しめる。「シュヴァルの理想宮」はユニークなアート素材であり、郵便配達夫がつくり上げた独創的な造形はダリ、ピカソ、ガウディなどにインスピレーションを与えたという。いずれもヴァランスからのエクスカーションやセラーめぐりのアクセントに加えるのもいいだろう。 フランスは国土の約半分が農業地帯。都市から少し離れると、クルマや列車の車窓からは豊かな食材が育まれる農地が広がる。「美食の渓谷」プログラムに参画する事業者は、自らの地域や食材、食とともに育まれてきた伝統文化に強い愛着とリスペクトを持っている。 取材協力:フランス観光開発機構、オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ観光局、リヨン観光局、ドローム県観光局、アルデーシュ県観光局 取材・記事 西尾知子
トラベルボイス編集部