よくわかる男性育休 取得率向上させたい企業が陥る落とし穴とは?
育休の分割取得、女性が利用すれば男性育休の後押しに
――改正法では2022年10月から育休を分割して取得できるようになりました。 「男女問わず、育児休業を分割して2回取得できるようになりました。これまでも男性は産後8週間以内に育休を取得すれば、その後もう一度取得できる制度はありましたが、改正法で女性も分割取得が可能になったことは意外と知られていません。動画共有アプリ『TikTok(ティックトック)』で行った弊社の調査では、育休を分割で取得できると知らなかった女性が8割に上りました」 「企業で管理職研修に招かれたときは『女性にこそ育休の分割取得の話をしてください』と伝えています。これまでは、女性がまとめて1年育休を取得するというイメージがあったのではないでしょうか。そのうえで男性も少し取得してくれたらと考えるのは、『男性は育児をヘルプする』という発想です。これでは男性育休も、女性活躍も進みません。育休を分割取得できるようになったことで、男性と女性でバトンタッチしながら休めるようになり、長い期間、仕事を離れなくて済む道が開け、男性育休にも追い風になりそうです」 ――夫婦によって多様な育休のパターンを選べるわけですね。 「2022年10月からスタートした男性の『出生時育児休業制度(産後パパ育休)』は、子どもの出生後8週間以内に4週間まで休業できる制度で、原則の2週間前までに申し出れば休業でき、これも2回に分割が可能です。さらに労使協定を締結している場合には、本人が合意した範囲で休業中に就業できるようになったところにも注目です。これまではどうしても外せない仕事があって休めなかったケースでも、一部就業しながら育休を取得できるようになりました」 「出産直後、女性のホルモンバランスは急激に変化し、メンタルヘルスを崩してしまうリスクも産後2週間をピークに3カ月程度まで続くといわれています。かつては妊産婦のサポートは実家が担っていましたが、いまは前提条件が変わり、孫が生まれるころでも祖父母も現役で働いています。産前産後こそパパの出番です。家族の命の問題であり、また、女性と一緒に育児を身に付けるチャンスでもあります」 「それでもし女性が順調に回復すれば、早く職場復帰してもいい。もしくは、しばらく女性が育休を取得してから職場に戻るタイミングで、男性が再び育休を取得してもいい。『女性がまとめて1年休む』という前提をやめて、夫婦の事情に合わせて、いつ、どちらがどれくらい育休を取るかを話し合うようになってほしいと思います。男性が育児をヘルプするのではなく、夫婦でシェアするという考え方です」