虎ノ門ヒルズやバスタ新宿を可能にした「立体道路制度」とは?
再開発でも「同じ場所で営業したい」が可能に
立体道路制度が創設された背景には、東京をはじめとして大都市に国際競争力が求められるようになったことも一因です。 細い道路が縦横無尽に走る区画は土地が細かく分断されてしまい、大きなビルを建設できません。現在の大企業ではワンフロアが1000坪という広大なオフィスも珍しくありません。そうした需要を満たすには、区画整理で土地をまとめる必要があったのです。しかし、既存の道路は容易には廃止できません。それは、交通面からだけではなく、防災面などの観点からも道路が必要なインフラとされてきたからです。どうしても道路を廃止する場合は、新たな道路を用意しなくてはならないのです。 立体道路制度は道路空間に柔軟性を持たせる役割を果たしました。しかし、こうした面だけを見ると、立体道路制度は行政や都市開発事業者だけにメリットがあるように感じます。私たち生活者にメリットはあるのでしょうか? 「再開発事業が持ち上がっても、『そのまま住み続けたい』『同じ場所で店を営業したい』と考える地権者は多くいます。立体道路制度をうまく活用すれば、地権者は移転せず、同じ場所に居住・営業できます」(見明さん)
“道路のオープン化”は都市再生の切り札になるか
国土交通省は2010年に新成長戦略として“道路のオープン化”を打ち出しています。道路のオープン化は、都市の道路空間を活用することで、新たなビジネスチャンスを生み出そうという狙いがあります。 これまで、立体道路制度は新設される道路にしか適用できませんでしたが、2015年には既存道路にも適用できるように法改正されました。 地方都市は郊外化が進み、中心市街地の空洞化が深刻化しています。立体道路制度は都市再生の切り札としても期待されており、例えば中心市街地に大きな道路をつくり、そこに集客力のある大型商業施設を建設することも考えられるのです。 立体道路制度は、あくまで選択肢の一つです。法律に柔軟性を持たせたことで、新しいまちづくりが期待できることは間違いありません。立体道路制度によって、今後、どんな都市が生まれるのでしょうか? (小川裕夫=フリーランスライター)