虎ノ門ヒルズやバスタ新宿を可能にした「立体道路制度」とは?
都市開発事業者の森ビルは先月、虎ノ門界隈に新たに3つの超高層タワーを建設する計画を発表しました。これら3つの高層ビルに先駆けて、森ビルは2014(平成26)年に虎ノ門ヒルズを開業させています。オリンピックに向けて、東京は各所で再開発事業が目白押しです。その中でも、特に虎ノ門エリアの再開発は注目を浴びています。 いまや虎ノ門エリアのシンボルにもなりつつある虎ノ門ヒルズですが、その建設には紆余曲折があり、一筋縄ではいきませんでした。
道路区域の「上空」や「地下」も開発可能に
その障壁になっていたのが、ヒルズの真下を走る環状2号線(通称:新虎通り)です。環状2号線は敗戦直後に都市計画で建設が決められています。ところが、用地買収や工事が思うように進まず、道路は完成しないまま歳月が過ぎました。
膠着状態に陥った環状2号線の工事に再び動きの兆しが出てきたのは、1989(平成元)年に「立体道路制度」が創設されたことでした。 今年4月4日に新宿駅南側にオープンした交通ターミナル「バスタ新宿」も同様に立体道路制度を活用して建設されています。この立体道路制度とは、どんな制度なのでしょうか? 日本みち研究所上席主任研究員の見明孝徳さんは、こう解説します。
「立体道路制度が求められた背景は、バブル期にあります。当時、都心部の道路は渋滞が激しく、交通は機能しているとは言い難い状況でした。行政は道路を拡幅したり、道路の数を増やしたりして通行空間を確保する必要に迫られていました。しかし、地価が高騰して用地買収は困難でした。従来の道路法では、通行や管理に必要な工作物を道路に置くことは原則として禁止されています。道路法における道路は道路面だけではありません。天上天下、つまり道路の上空や地下にも法律が及ぶため、道路の上空や地下にも建物を建てたりすることができなかったのです。これは、道路を確保する意味で大事なことですが、それだとかえって開発ができなくなります。そうした道路法は、使い勝手が悪くなり、時代に合わなくなったのです。そこで、道路法、都市計画法、建築基準法などをまとめて改正し、一体的に整備できることを可能にしたのが立体道路制度です」 つまり、これらの法整備によって、道路区域の「上」と「下」の範囲を定められるようになり、その道路区域外の空間を利用できるようになったのです。