「ロコモコ」発祥地ハワイ島・ヒロで、日本人移民が持ち込んだ生魚食文化「ポケ丼」を愛でる
ワイロアリバー州立公園のすぐ近くにある、日系移民が1907年に創業した「スイサン・フィッシュマーケット」は、ヒロの海辺で100年以上にわたって新鮮なシーフードを提供している鮮魚店。ハワイ島じゅうに新鮮な魚介類を届けている。店頭では、ハワイの定番グルメの「ポケ(マグロなどの切り身を醤油ベースのソースで和えたもの)」をごはんにのせた「ポケ丼」のテイクアウトが可能。ポケはハワイの古代先住民時代から伝わる、獲った魚の刺身を味つけして食べるご馳走だ。中国や日本からの移民が持ち込んだ醤油とごま油がそれに加わり、ご飯に載せて丼にしたハワイとアジアの合作料理。たしかに、日本の漬け丼にとても似ている。 マーケットでは、水揚げされたばかりのアヒ(マグロ)やアク(カツオ)などを店内で調理販売しており、その味を求める地元民や旅行者で毎日賑わっている。ロコモコとポケ丼、どちらも日本人がもたらしてハワイに根づいた、愛すべきローカルグルメなのだ。
マーケットのすぐそばにあるリリウオカラニ公園は、日本の美意識を感じられる、静かで落ち着いた海辺の癒やしスポット。もともとは王族のための養魚場があった場所で、リリウオカラニ女王がこの土地を公園として提供したのがはじまりだ。 じつはこの公園には、日本人移民の歴史と深い結びつきがある。というのも、ハワイの発展に貢献した日本人の努力と文化的な遺産を記念する場として設立されたからだ。12万㎡にも及ぶ庭園には、赤い太鼓橋が架かる回遊式庭園があり、日本庭園の美しさとハワイの歴史を感じられる。公園を訪れていた多くの観光客が日本の文化に関心を寄せているようすを見て、うれしくなってしまった。 古代ハワイでは、「アフプアア」という土地利用システムがあった。この仕組みは、山から海までの自然の流れをひとつの単位とし、土地や水、動植物を循環的に利用して共存するという考えに基づいている。この知恵は、現在のサステナブルな農業や観光に活かされ、自然環境を守りながら暮らす手法として現代にも受け継がれている。一方、日本でも自然との調和を重んじた文化が根づいている。伝統的な農業や「里山」の概念は、自然の恵みをムダにせず、持続可能な形で利用することを教えてきた。 私たち日本人がハワイに特別な親しみを感じるのは、そんな共通した概念を大切にしてきたからかもしれない。海外への旅は、自分のルーツに想いをはせる絶好の機会でもあるのだ。 text & photo:鈴木博美