セルフレジの縮小・廃止が続く小売業界 有人レジや決済アプリなど「複数オプション」を導入する企業も
決済用アプリを導入する店舗も
独立したセルフレジコーナーをテストする店舗がある一方、決済用のモバイルアプリを公開し始めた店舗もある。たとえばウォルマート(Walmart)は、「ウォルマートプラス(Walmart+)」会員向けにモバイル決済オプションを提供している。Appleは、店頭で周辺機器を購入する顧客が、「Apple Pay(アップルペイ)」経由で「iPhone」から支払いができるようにした。インスタカート(Instacart)は、スマートカートの提供を拡大し続けるだけでなく、最近ではセーブマート(Save Mart)と提携して、手動でのスキャンを完全に不要にした。 グリゾリア氏によれば、小売業者はアプリベースの手法を採用することで、パーソナライズされたクーポンやセット販売サービス、カーブサイドピックアップ(店舗受け取り)などの付加価値を提供できるという。 セルフレジから撤退する場合、小売業者はその店舗でポジティブな顧客体験を維持できるようにしなければならない。ダラー・ゼネラルのバソス氏によれば、同社は顧客を歓迎し、ポジティブなレジ体験を提供することを優先しているという。「当社は大半の店舗でセルフレジからの撤退を続けているため、顧客にサービスを提供したり売上の成長を支えたりする上で、こうした取り組みに注力することがますます重要になると考えている」と同氏は語った。 また、顧客からのフィードバックはいまのところポジティブなものだと、バソス氏は話す。「消費者の全体的な反応は、『ありがとう。いつでも直接やり取りできる人がレジにいるのは良いことだ』というものだ」。
事業運営の重要な要素に
とはいえ、いったん公開した技術を完全になくすことはほとんど不可能だ。これは、その問題に対処しなければならないことを意味する。ブルームバーグ(Bloomberg)は5月30日、技術的な問題がウォルマートの約1600店舗でセルフレジの価格設定に影響を及ぼし、一部の顧客が実際の購入額より多い金額や少ない金額を請求されていたと報じた。ウォルマートの広報担当者はブルームバーグに対し、現時点で過剰請求された顧客の80%以上に払い戻しを行ったと述べている。ただし、米モダンリテールからのコメント要請には応じていない。 ウォルマートのウェブサイトによると、同社は今後も有人レジとセルフレジの両方を提供するほか、ウォルマートプラスの会員にモバイルスキャンオプションを提供するという。また、年内に米国の650店舗を改装し、今後1年間にサムズクラブ(Sam's Club)の新店舗を30店オープンする。さらに、今後5年間で、ネイバーフッドマーケット(スーパーマーケットとディスカウントストアを合わせた業態の店舗)にスーパーセンターと呼ばれる大型店舗を150店舗オープンする予定だが、そのほとんどが新規の出店だ。 サプライチェーンオートメーション事業を手がけるバーコーディング(Barcoding)でIoTディレクターを務めるJWフランツ氏は米モダンリテールに対し、セルフレジ人気が同社の事業運営の重要な要素のひとつになっていると述べている。バーコーディングは、サプライチェーンを追跡して商品の動きに関するデータを収集する取り組みで企業を支援しているが、このデータはセルフレジのPOSシステムで利用できるからだ。 「2年前に、このような話を当社がすることはまったくなかった。だが今では、当社にとって最優先事項になっている」と、JWフランツ氏は語った。 [原文:Retailers are continuing to pull back on self-checkout] Melissa Daniels(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:戸田美子) Image via Safeway
編集部