死亡届を出したら銀行口座が凍結される?凍結前にお金を引き出すリスクとは
口座凍結の前にお金を引き出すとどうなる?
口座凍結前に預金を引き出すことは可能ですが、思わぬトラブルを招く可能性があります。 ●相続手続きの際にトラブルになる可能性 通常、遺産はすべての相続人によって協議され、公平に分割されるべきものです。しかし、預金が無断で引き出された場合、その分の金額をどのように取り扱うかについて相続人間で意見が対立することがあります。 特に引き出した金額が大きかったり、使途が不明瞭であったりする場合、遺産分割協議がスムーズに進まなくなり、結果として家族同士の関係が悪化する恐れがあります。 また、預金が無断で引き出されると、相続手続き全体が遅れる可能性があります。遺産分割協議が進まなくなる場合、全体の手続きが滞ることになります。相続手続きが遅れることによって、さらなるトラブルを生む要因となるかもしれません。 ●相続放棄ができなくなる可能性がある 日本の民法では、相続人が故人の財産を事実上管理・処分したと見なされる行為を「単純承認」と呼びます。単純承認が成立すると、相続人は故人の全財産をプラスもマイナスも含めて引き継ぐことになります。 預金を引き出す行為は、故人の財産を管理・処分する行為と見なされるため、これが単純承認とされる可能性があります。仮に単純承認が成立した場合、相続放棄や限定承認(プラスの財産の範囲内で負債を引き継ぐこと)を選ぶ権利を失ってしまいます。 このため、故人の負債も相続人に全て移ることになります。これには、住宅ローン、借金、税金の未納分などが含まれる場合があり、特に、故人が多額の借金を抱えていた場合、その借金を相続人が引き継ぐことになりかねません。 このようなリスクを避けるためにも、相続の手続きが完了するまで故人の財産には手をつけないことを心掛けておきましょう。では、どうしても葬儀費用などのために預金を引き出す必要がある場合は、どのようにすればよいでしょうか。
預貯金の払い戻し制度とは
預貯金の払い戻し制度は2019年7月1日から施行された制度で、相続手続きが完了する前でも、一定の条件下で故人の預貯金の一部を相続人が払い戻すことができる制度です。 これにより、葬儀費用や当面の生活費、故人の債務の支払いなど、緊急を要する支出に対応することができます。 相続人が引き出せる金額には制限があります。 ・相続開始時の預金額 × 1/3 × 払戻しを行う相続人の法定相続分 1つの金融機関から払い戻せる上限は150万円となっています。 金融機関ごとに手続きが異なるため、詳細は利用している金融機関に問い合わせましょう。 預貯金の払い戻し制度は、相続手続きが進行中でも必要な資金を確保できる便利な仕組みですが、他の相続人との合意や、後の遺産分割に影響を与える可能性があるため、慎重に利用することが重要です。不安な場合は、事前に弁護士や税理士に相談することをおすすめします。