タワマン価格が「一気に暴落」する日はくるのか…転売を繰り返す人々を待ち受ける「天国と地獄」
地方でも高まるタワマン熱
熱狂は都心部だけに限らない。上の図の通り、タワマンが存在しない都道府県は日本に8つだけ。最近では地方でも建設ラッシュが起こり、ブームが過熱している。不動産評論家の牧野知弘氏が、地方の事情を解説する。 「札幌や福岡などの都市圏を除けば、投資需要ではなく居住目的での購入が大半。人口が30万人以上の都市ならば、タワマンへの需要があると言われています。 興味深いことに地方都市にあるタワマンの高層階は、広い住戸を用意しているケースが多い。見栄を張りたい地元の有力者や有名企業のオーナーといった名士たちが競って買っていき、別宅や会社の福利厚生施設として使うそうです。戦国武将たちが権力を誇示するために、城のてっぺんに天守閣を造ったのと同じ心情なのかもしれません。 一方で地方はコミュニティが根強いので、『最上階の部屋を買ったのは○○さんらしい』といった情報がすぐに出回る。あえて奥ゆかしく見せるために最上階の一つ下のフロアを選ぶ人も少なくないため、そちらから先に売れていくケースもあるようです」
地上28階のドッグラン
建設ラッシュが進めば進むほど、デベロッパー側は他のタワマンとの差別化に必死になる。それゆえ近年では、個性的な特徴を備えたタワマンも登場している。 「豊洲にある『スカイズタワー&ガーデン』の屋上には共用施設として天体観測ドームがあり、大型の望遠鏡で夜空を観察できます。また『パークタワー東雲』には地上28階に3層吹き抜けのドッグランが設置されていて、雨の日でもマンションから出ることなくペットを散歩させられます」(都心マンションソムリエの稲垣ヨシクニ氏) とりわけ個性的なのが、東京の中心部・白金にある「白金タワー」の訪問看護ステーションだろう。坪単価が約900万円と言われるこのマンションで、管理組合法人の代表理事を務める星野芳昭氏が説明する。 「戸建てを売却して、タワマンを終の棲家にすると決めた高齢者の方が増えています。そこで'18年の総会にて、資産価値を高めるために共用施設を改装し、訪問看護ステーションを誘致することを特別決議しました。居住者であれば看護師らによる健康相談や運動教室などを受けられますし、さらには医師の指示に基づいて介護保険や医療保険による在宅看護サービスも利用できます」 熱が高まっているのは日本人に限らず、中国人や韓国人の間でも同様だ。 「日本でタワマンを買う外国人のほとんどは東アジアの人々。儒教では身分の序列を重んじるため、上層になるほど部屋の値段も上がっていくタワマンの構造を受け入れやすいのではないでしょうか」(住宅ジャーナリストの榊淳司氏) とりわけ中国の富裕層に人気なのが、湾岸エリアのタワマンだろう。詳しくは第6部で解説するが、過去には4億円の物件をキャッシュで購入した中国人もいたという。