天皇陛下が過ごされたイギリス、青春時代の「オフショット」…「多くの出会いを経験した留学」
天皇陛下の英国留学時代(1983~85年)の素顔を捉えた未公開の写真18枚が、読売新聞に保管されている。当時の関係者から寄託されたものだ。その多くは、広い世界を知る旅に出て、周囲の目を気にすることなく、のびのびと人や自然と触れ合われた若き日の「オフショット」。陛下が即位後初の英国公式訪問に臨まれるこの機会に一部を紹介する。 【写真12枚】青春時代の天皇陛下、若き日のオフショット集
山に登る
日本で百名山の登山に挑んでいた陛下は、英到着の当初から<イングランド、スコットランド、ウェールズの最高峰を登ってみたいという考えがあった>。留学記「テムズとともに」の中でそう明かされている。
85年の夏には、学生仲間たちと共にイングランド北部のスカーフェル・パイクを登山された。行程は3時間半に及び、<登っても登ってもなかなか山頂が見えないところにこの山の奥深さが感じられた>とふり返られている。この登山で3地方の頂を制するという目標を達成された。
海に出る
留学記には、研究の対象となったテムズ川流域の散策のほか、欧州大陸を対岸に望むドーバー地域を巡り、保険組合ロイズの会長の誘いで、チャネル諸島サーク島の別荘で過ごされたエピソードも登場する。
ウェールズ沖で王立救命艇協会の訓練を視察された時の写真も寄託された。救援隊の制服姿で、救命艇から海上に身を乗り出されている。その笑顔は、日本ではできない体験を楽しまれているように見える。
スペインのマヨルカ島で、皇太子時代のフェリペ国王とカジュアルに過ごされた時のカットもあった。ほかにもオランダやベルギー、ノルウェー、リヒテンシュタインなど各国の王室で温かなもてなしを受け、<両親が長年かけて築き上げた友情によるものだと意識し、継承していく必要性を強く感じた>と書きとどめられている。当時の写真は、陛下の国際親善の原点を伝える記録でもある。
音楽愛好家として、プラハ郊外のドボルザークの生家を訪ねたほか、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーと共演もされた。旅先で陛下と気づいた人に頼まれれば、記念撮影にも気さくに応じられた。スペインで女性観光客に囲まれた1枚もある。
陛下は皇太子時代の親善訪問で、マレーシアの首相やデンマークの市民と一緒にセルフィー(自分撮り)に納まり、話題になったことがある。陛下が自由を満喫した40年前の旅を知る関係者は、「相手が要人でも市民でも親しく交わるスタイルは、多くの出会いを経験したあの留学を経て確立された」と話している。(写真部 平博之、編集委員 沖村豪が担当しました)