未成熟な社会への警笛-藤井浩人美濃加茂市長×中谷一馬衆院議員
フェイクニュースに対応するシティズンシップ教育
【藤井】 メディアやSNSの問題でいえば、リテラシーを育む環境をどう整えるかという点も課題になってきます。 【中谷】 残念ながらフェイクニュースが蔓延するいまはファクトチェックが重要になっているので、教育課程の中にそうした内容を含んだリテラシーの科目を組み入れるべきだと思います。情報が正しいかどうかを客観的にチェックする能力を醸成できれば、グローバルな社会でよりよいプレゼンスを発揮できる国になると私は考えています。 これに関し、欧米ではシティズンシップ教育が非常に進んでいます。 情報収集を行う際に、「十分な情報量を収集できているか」・「情報源は信頼できるか」・「集めた情報は事実と合致しているか」などのリテラシーを向上させるために米国の例でいうと、小学生の低学年から授業でこんなことをやっています。「アイスクリーム・休み時間・宿題のそれぞれの賛否を選んでください」という質問を出す。多くの子どもはだいたいアイスクリーム・休み時間に賛成、宿題に反対を選ぶ。でも賛成したアイスクリームはニンニク味で、休み時間には腹筋訓練をするという罰ゲームが待っている一方で、宿題を選ぶと「週末の宿題はなしですよ」となる。 そこで先生は子どもたちに問うわけです。「あなたが選んだ選択肢は、望んだとおりの結果になりましたか? なっていなかったとしたら、なぜあなたはアイスクリームの味やどんな宿題なのかを聞かなかったのですか? あなたは情報を精査しましたか?」と。仮にこれを消費税に置き換えると、「20%にしますか? 0%にしますか?」と選択を迫られたとき、20%を選んだ場合、それが本当に社会保障財源など国民のために使われるのか、経済は大丈夫か、0%を選ぶなら社会保障財源などをどう補うのか、必要な財源をどのように捻出するのか、といったことを精査する必要があるということです。当然、どちらにもメリット・デメリットはありますから。 【藤井】 小さいときから、自分自身で深く考えて意思決定するためのスキルを身に付けさせるわけですね。 【中谷】 加えて、情報の背後にはステークホルダー(利害関係者)が存在していて、公平中立であるとは限らないという点を認識させる。だから与えられた情報で判断するのではなく、自分から多角的な情報を能動的にとりにいって、元情報の信憑性の有無や公平中立のものであるか否かなどを吟味する。幼い頃から情報とどう向き合うかということを考えることができる仕組みを構築することがこれからの時代には必要となります。 これまでは、「日本語の壁」があって、世界からフェイクニュースが入りにくい状況にあり、諸外国のプロバカンダ(意図やたくらみを持った宣伝行為)で制脳権(感情を利用し、大衆の認識・認知をコントロールすること)を脅かされることは少なかったし、認知戦(人間の脳などの認知領域に働きかけて言動をコントロールする戦い)に巻き込まれることもあまりなかった。しかし、生成AIが活用される時代になり、それっぽい日本語の文章が容易に作成できてしまい、総理大臣や天皇陛下までもが詐欺の偽広告に悪用される時代になりました。6G時代になれば、4Gの1万倍の速度で情報伝達できるようになり、Zoomでしゃべっているくらいの速度レベルでどんな言語にも翻訳される。現在でもディープフェイクの技術で人の音声をコピーした音声データが簡単に作られてしまう。そんな時代を迎える中で、日本人として情報とどう向き合うかという教育をしっかりと行い、受験レベルでも落とし込んでいかないと、この国は情報戦に勝てないので、時代のニーズに対応した体制構築を行いたいと考えています。