「何をもって良い俳優となるのか、答えを探し続けている」池松壮亮の美学と譲れない信念
初共演した三吉彩花、水上恒司の印象
──今回、Bezzyではリレーインタビューということで、先にお話をいただいた三吉彩花から池松さんとの思い出を伺っていまして。三吉さんが現場でパンクしかけたとき、池松さんに救われたとおっしゃっていました。 石井さんはとても感覚的な言葉を使い、脚本の裏や奥を求められることがあるので、慣れない方は悩まれることもしばしばあります。三吉さんはとてもプロフェッショナルに自分の気持ちや思いを人に見せずに現場に立たれている印象がありました。そのことや難しい役との向き合いの日々の中で立ち止まるような瞬間があったんだと思います。自分の心に起こるバグを、隠し通さずに本心を吐露してくれたことにとても感謝しています。その後撮ったシーンの三吉さんがあまりにも良かったことを覚えています。本作を観てくれた方から三吉さんが覚醒していたという感想をいただきました。共演者として心から嬉しかったです。もともと持つ高いポテンシャルと、作品や役との出会いやタイミングが合わさることで素晴らしい表現が映画に刻まれたのだと思います。 ──池松さんの言葉のおかげで撮影を最後まで乗り切れたとおっしゃっていたのですが、何を伝えたか覚えていますか。 ごめんなさい、実は自分が何を伝えたのかはまったく覚えていないんです（笑）。 ──そんな三吉さんから質問を預かっています。池松さんがいい人すぎて、性格が悪くなる瞬間があるか聞きたいそうです（笑）。 もちろんいっぱいありますよ（笑）。自分がいい人かどうかも、とてもそうだとはいえません。 ──差し支えない範囲でちょっとお伺いできれば（笑）。 ……決して今じゃないですよ。今じゃないですとお断りした上で言うと……。 ──はい。 取材を受けながら、しょうもない質問だなと思うことがあります（笑）。 ──ありますよね（笑）。 記者の方もありますよね。しょうもない答えだな、なんでそんな定型文みたいなこと言ってんだって。お互い様ですよね（笑）。 ──リレーインタビューのラストは、水上さんにお話を伺う予定です。水上さんとの思い出を聞かせていただけますか。 水上くん演じる岸谷と朔也は幼馴染のように育った関係で、貧困や格差によってその関係が引き裂かれていきます。二人が最後に対峙する重要なシーンがあるのですが、途中から長いワンカットで撮影したんですね。体で取っ組み合い、会話を繰り返し、離れて去るまでをワンカットに収めたとても見応えのあるものになっています。あのシーンを本番一発で決めてくる水上くんの集中力と気迫と瞬発力など、素晴らしいかったです。聡明で人懐っこく、とても自然体で、なんというか久しぶりに背骨がしっかりとした俳優を見た気がしました。そうした自分軸をしっかり持っているので、あまり人の話を聞いていないようなことも少し感じました（笑）。野心をしっかり自分で持っていると思うので、年齢を重ねて今後更に活躍していくだろうなと感じました。 ──そんな水上さんに聞いておきたいことはありますか。 なんだろう。あ、じゃあ人の話ちゃんと聞いていますか、って聞いてみてください（笑）。 取材・文／横川良明 編集・構成／小島靖彦（Bezzy）
