「ネトフリ」「アマプラ」ドラマを押さえてベスト1に選ばれた「地上波作品」とは?…辛口コラムニストが選ぶ2024年「ドラマ総まくり」
いいドラマの条件とは
林:「トラベルナース」にせよ「ブラックペアン」にせよ、第1シリーズのときから作品として年間ベストに入るまでの出来だとは思わなかったのよ。でも、続篇もそれなり以上の「いいホン・いいヒト・いいシゴト」が投入されて、かつちゃんと売れる商品になった。そういう、良くも悪くもの職人仕事をやってみせてくれたプロたちは評価したい。 アナ:「いいホン・いいヒト・いいシゴト」は、かつて林さんが映画づくりのベテランから聞いたという「いいシャシン」の条件でしたね。 林:そう。「トラベルナース2」も「ブラックペアン シーズン2」も、企画・脚本(ホン)は手堅いし、キャスティング(ヒト)には違和感が薄いし、演出や撮影など(シゴト)も穴が少なかった。 アナ:同感です。 林:しかし、今思えばワタシのシリーズもの嫌いは贅沢だったなぁ。ノンシリーズ前提の単発連ドラに見るべき作品がたくさんあったドラマ全盛期を知ってるからこそできた。そんな贅沢はもうできません。 アナ:というと? 林:シリーズもの嫌悪っていうのは、駅前の商店街にチェーン店が入り込んできたと怒ってるようなもの。チェーン店を嫌っていられたのは商店街の個人商店のあれこれが繁盛していたからで、そのあちこちが廃れたり潰れたりするようになると、今度はチェーン店でもありがたくなる。シリーズものでもいいから、売れて喰えるドラマをつくってくれてありがとう……というのが、今の心境なのよ。 アナ:よく、わかりました。ただ、今の商店街アナロジーで言うと、個人商店やチェーン店以外も日本のドラマ界には…… 林:あああ、皆まで言うな、皆まで言うな。アナタの心に今浮かんでいるであろう疑問には、この後のランキング発表で答えられるから!
外資系ドラマの活躍
アナ:では、発表を続けてください。 林:おう。連ドラ2024年ベスト3、第2位は…… ▼「シティハンター」【Netflix/4月配信開始】 ▼「地面師たち」【Netflix/7月配信開始】 ▼「極悪女王」【Netflix/9月配信開始】 ……の3本です! アナ:おお、Netflixの話題作が3本! 民放は民放でも外資系! いや、まさに先ほどはこの点をお尋ねしたかったんですよ。日本のテレビドラマの世界では駅前の商店街で個人商店が減ってチェーン店が増えているとの見立てですが、郊外に外資系の大規模店も増えてきていませんか、と。 林:そのとおり。 アナ:2024年は真田広之さんがアメリカのエミー賞に輝いた「SHOGUN 将軍」(Disney+/2月配信開始)やAmazon Prime Videoの「推しの子」(11月配信開始)もあって、外資系による連ドラがこれまでになく目立った年になりましたから。 林:「SHOGUN 将軍」は日本をメインの市場として制作されていない“アメリカのドラマ”だから今回のベスト&ワーストの選出対象から外したし、「推しの子」は配信スタートが11月末でまだ続いたり、出来のほうもNetflix勢に劣ったりするからベスト2位には含めなかったけどね。 アナ:そういうことでしたか。 林:でも、NetflixやAmazon Prime Videoの作品より目立たなかった国内勢の民放連ドラがどっさりある。それに、ベスト2に挙げたネトフリの3作は話題性だけじゃなく、ホン・ヒト・シゴトも決して悪くなかった。と言うより、凄みさえ感じさせられたよ、特に「地面師たち」と「極悪女王」には。