男女の友情は成立する? 片方が恋愛感情を抱いてしまったら? 永遠の論争に新しい答えを提示したドラマ『若草物語』
少しずつ増えてきた「恋しない人」のドラマ
ここ数年、「恋しない人」がしっかりと描かれるドラマが増えたなーと感じます。人間は恋をする生き物、恋してナンボ、という雰囲気が充満しているこの「恋愛至上主義」な社会で、いないことにされているような存在が可視化されるだけで、とっても心強い気持ちになります。 マイノリティが登場する作品が増え、一気にその問題への理解が進むかと言うとそうでもなく、やはり最初は描き方の課題も浮き彫りになります。その存在にスポットを当てる可能性を秘めつつ、描き方によってはかえってその存在へのスティグマを強化することに繋がることも。 もちろんはじめから完璧なんて無理だし、時間をかけて成熟していけばいいんじゃないか、とも思います。ただ、その上で気になる点は率直に議論したいとも思っています。
恋しない生き方を描いた『若草物語』
今回は、「恋しない人」を描いたドラマウォッチャーである筆者が、先日最終回を迎えたドラマ『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私』(以下、『若草物語』)を見て感じたことを率直に語ります。以下ネタバレを含みますので、これから観る! という方はご注意ください。 *** 4姉妹の日常を描いた『若草物語』の主人公は、脚本家を目指している次女・町田涼(堀田真由)。彼女は恋をしないし、結婚もしない、と決めている人です。 ドラマのタイトルに“恋せぬ”というワードがガツンと入っているだけあって、恋しない生き方を貫く主人公の考えや生き様を、真っすぐ描いた作品でした。 涼は、ドラマの制作に携わる人たちの、「ドラマは恋愛要素があってこそ大衆受けする」という固定観念に疑問を持ち、正面からぶつかっていきます。恋愛ドラマの脚本で有名な大平かなえ(筒井真理子)の元で働きつつも、安易な恋愛の展開にならないドラマのプロットを提出。 さらに、自身が脚本を務めるスペシャルドラマでも、発想力で上層部を説得し、通常であれば恋仲になる登場人物たちをくっつけない、というストーリーを通すことに成功するのです。 恋愛要素がないとウケない、と難色を示す上層部に対し、涼はこう言います。 「周囲の期待に応えるために、二人をくっつけたりしたくないんです。主人公の生き方を尊重して描く方法を優先したいと言うか」 それに対し、「とは言っても恋愛要素が薄いのはなあ」と返されますが、涼は負けじと食い下がります。 「恋愛や結婚が抜け落ちても幸せを達成できることを、二人の友情で描いてみたいんです」 恋愛して、結婚してこそ幸せになれる。そんな価値観への抵抗が随所に見られるドラマでしたし、最後までそのメッセージを打ち出し続けていたところはすごく頼もしく感じました。