【解説】震源から遠く離れた場所で高い津波を観測 巨大な海底山脈の存在
■津波小さくなったのに…数時間後に再び津波観測
当時の日本各地の検潮記録によると、北海道・浦河では、地震発生から約2時間半後に津波の第一波が到達したものの、徐々に津波波形の振れ幅が小さくなっていきました。 気象庁によりますと、午後8時29分に津波警報・注意報を発表しましたが、観測した津波は予想の高さよりも低く、徐々におさまりつつあったため、警報を注意報に切り替え、翌日の午前1時30分にはすべての注意報を解除したということです。しかし、その後、津波波形に動きがあり、日本各地で再び津波が観測されたのです。 ▼北海道浦河で59センチ ▼青森県八戸で53センチ ▼宮城県石巻市鮎川で48センチ ▼千葉県館山市布良で45センチ ▼三宅島坪田で84センチなど さらに、震源から遠く離れた、四国や九州、沖縄地方でも津波が到達しました。 ▼高知県室戸岬で42センチ ▼高知県土佐清水で46センチ ▼鹿児島県奄美市小湊と中之島で47センチなど
■巨大な海底山脈に津波が衝突
気象庁気象研究所の分析では、地震発生から30分後に発生源から津波が徐々に広がっていきました。2時間後には東北地方や関東地方までの広い範囲に津波が到達。3時間半後には、これまで一方向へ同心円状を描いていた波紋が、震源から離れた場所で発生し、津波が伝播していきます。そして、地震発生から5時間50分後、日本の太平洋沿岸の広い範囲で津波の波面がはっきりと出ています。 なぜ、一度おさまったとみられた津波が、時間が経過した後に再び観測されたのでしょうか?その理由は、海底にある巨大な山脈「天皇海山列(てんのうかいざんれつ)」が関わっていました。日本列島のはるか東の太平洋にある海底山脈「天皇海山列」まで津波が到達し、この山脈にぶつかったことで津波が跳ね返りました。跳ね返ったことにより、津波が方向を変えて日本付近に戻ってきたと考えられています。
■日本に津波が集中
地震の専門家で、環境防災総合政策研究機構の草野富二雄さんによりますと、津波は発生源から同心円状に一様な強さで広がるものではなく、横方向へ強く放出される性質があるといいます。 たとえば、チリ沖で発生する津波の場合、その発生源であるチリ海溝は日本に対して平行な位置関係にあるため、日本で高い津波となるということです。 一方、アリューシャン沖やメキシコ沖などは日本に対して長軸方向となるため、津波は小さくなる傾向があります。また、津波には屈折や反射という現象があり、チリ沖で発生した津波であっても日本に向かう途中で、ハワイ諸島などの海底の凸凹によって日本に津波が集中すると考えられるということです。 遠く離れた海外の地震でも、日本に高い津波をおよぼす可能性があるため、津波注意報や警報などの情報に十分注意してください。