ドル安への賭けは「見事に失敗」のリスク、歩調合った各中銀の動きで
(ブルームバーグ): 各国・地域の中央銀行が2008年以降で最も歩調の合った利下げに踏み切る可能性が、回復傾向にあるドルを下支えしそうだ。
ウォール街の関係者は年初時点で、連邦準備制度が数回にわたる積極的な利下げを開始するとの観測に基づき、ほぼ全てのG10通貨が対ドルで上昇すると予想していた。しかし、ドルの指数は1-3月に2%余り上昇し、他の主要通貨のほとんどを上回るパフォーマンスを見せている。
24年はドル高、JPモルガンやHSBCが逆張り-地政学的緊張も味方
ドルのパフォーマンスは、米利下げ幅予想が修正されていることや、米国が単独で動くわけではないという認識を反映している。ブルームバーグがエコノミストの予測と国際決済銀行(BIS)のデータを分析したところによると、連邦準備制度を含む世界の主要中銀11行のうち10行が今年後半までに利下げに踏み切る見通しで、この16年間で政策緩和サイクルの歩調が最も合っている。
数少ない例外の一つは日本銀行だ。19日の金融政策決定会合で世界最後のマイナス金利政策を解除し、現代史上最も積極的な金融刺激策を終了したものの、当面は緩和的な金融環境が継続するとした。
日銀17年ぶり利上げ、マイナス金利解除が意味することとは-QuickTake
ブルームバーグの分析によると、これら中銀の80%以上が同時に政策緩和を行った際、ドルは各四半期に平均で3%余り上昇した。米政策金利は今年末時点でもニュージーランドに次いで主要先進国の中で最も高い水準にとどまると予想されるため、ドルは優位性を維持する見込みだ。
みずほ銀行の経済・戦略責任者、ビシュヌ・バラサン氏は、「とめどなく積極的なドルショートの賭けは、見事に失敗するリスクがある」と指摘。「連邦準備制度の政策シフトがドルショートを成功間違いなしの賭けにするという話は、信じられないほど一面的だ」と述べた。
ドル回復のシナリオは、一見すると逆張りのように見えるが、米経済が景気後退を回避できるほどの強靱(きょうじん)さを維持し、積極的な政策緩和への期待を市場が縮小せざるを得なくなることで現実味を帯びるかもしれない。ドルへの追い風には、イールドプレミアムや、資本流入を持続させる堅調な米株式市場などがある。