半導体露光装置から宇宙へ――京セラのセラミック材料、新市場で展開拡大
京セラは、低熱膨張性や高い機械的強度などの特性を有するファインセラミックスの一種「コージライト」を開発/提供していて、同材料は半導体露光装置のウエハーステージ用途で広く採用されている。同社はこの材料を生かせる新たな市場として、宇宙業界での展開を強化。2029年度には宇宙関連の事業規模を現在の6倍の30億円に拡大する目標だという。今回、コージライト製品の担当で、ファインセラミック事業本部FCビジネスディベロップメント1部BD1課の課責任者、神浦真亜氏に詳細を聞いた。 京セラのコージライトの具体的な特性および低熱膨張ガラスとの比較だ[クリックで拡大]出所:京セラ
「事業の柱の一つ」半導体製造装置向けでは広く展開
半導体露光装置のウエハーステージは、環境温度変化や露光処理時のレーザー光による局所的な温度上昇による寸法変化を抑えるため、低熱膨張性が重要だ。また、正確かつ高速な動作の実現のため高剛性や軽量設計への適合も必要となる。従来は低熱膨張ガラスが用いられていたが、低熱膨張ガラスは比剛性が低く、露光装置ではスループットが高くなると振動が発生するため適用が困難だった。京セラは、この課題解決に向けて比剛性が高いコージライトを開発/提供していて、既に長い実績がある。神浦氏によると、同社のコージライトは大手の半導体露光装置メーカーなどに広く展開していて、現在、売上高は数百億円規模と、ファインセラミック事業における柱の一つになっているという。
なぜ宇宙分野を狙うのか
そして、このコージライトの次なる有望市場として照準を定めたのが、天文宇宙産業だ。宇宙関連では人工衛星に搭載される光学ミラーにおいて現在、低熱膨張ガラスが多く用いられているという。京セラのコージライト(ファインコージライト CO720)は、熱膨張係数の保証値が0±20 ppb/K@22℃と、低熱膨張ガラスと同じような低熱膨張性を備えつつ、機械的強度は低熱膨張ガラスの1.5~2倍程度高い。さらに寸法安定性、耐放射線性などでも熱膨張ガラスを上回る特性を有することから、露光装置のウエハーステージと同様な置き換えを狙っている(特性を比較した詳細は下図) また、京セラのコージライトは、熱伝導率(上図の表最下部)が低熱膨張ガラスの3倍程度高いのも特長で、神浦氏は「光学ミラーとして使用する場合、熱伝導率が高いと面の温度の均一化が早く図れるため、非常に有利なポイントだ」としている。