Reiが語る、人生の変革期にギターと真正面から向き合うことの意味
Reiはブルーズやロックにポップの感覚を合わせた独自の詞曲を作って歌うシンガー・ソングライターだが、それ以上に卓越したテクニックを持つギタリストとして広く知られているのは間違いのないことだろう。そのReiの新しいミニアルバム『XINGS』は「ギター・プレイをフィーチャーした」作品だという。 【画像を見る】史上最高のギタリスト250選 前作『VOICE』こそ歌声とソングライティングに焦点を当てた、彼女にとっては少し異色のミニアルバムだったわけだが、「ギター・プレイをフィーチャー」することはこれまでもずっとやってきたわけだし、ギタリストなのだから当たり前のことなんじゃないか。そう思った人もきっといただろう。では、ギター・プレイのフィーチャーの仕方はこれまでと何がどう違うのか。違うのはギター・フィーチャー度の割合なのか、新しさなのか、なんなのか。その答えが『XINGS』にあり、聴けばなるほどと深く納得することになるのだが、Reiの口からも直接そのあたりを聞きたいとインタビューに臨んだ。このタイミングで「ギター・プレイをフィーチャーした」作品を作ったことにはどういう意図と思いがあったのか。そこに迫る前に、まずは最近のライブの話から始めよう。
スガシカオやRHYMESTERから学んだこと
―今年のフジロックは大活躍でしたね。まず初日のGypsy Avalonステージでのライブが凄かった。単独での出演は7年振りとあって、めちゃめちゃ気合いが入っているのを感じました。 Rei:はい。気合い入ってました。 ―その翌日にはFIELD OF HEAVENステージでスガシカオさんのバンドのギタリストを務めました。別のアーティストのライブやレコーディングにゲストで参加することはこれまでにもありましたが、バンドの一員として参加して一緒にツアーをまわるという経験は初めてですよね。いかがでしたか? Rei:ものすごく刺激的な経験でした。去年はRHYMESTERと一緒に曲を出して(RHYMESTER「My Runway feat.Rei」)、その流れでのツアーに帯同して、武道館にも立たせていただきました。そして今年はスガさんのツアーに参加させていただいたわけですけど、そうやってほかのアーティストさんの横でギターを弾くことでフィードバックがあるんです。まず自分のプレイを振り返って精査する必要があるので、反省点を洗い出したり、ここが弱いなと思うところを強化することを繰り返して、スガさんの理想に近づけるようにギターのレベルアップを図りました。それが今回の作品にもすごく活きていると思います。 ―スガさんとのツアーと今回のミニアルバムの制作が同時進行で行なわれていたわけですね。 Rei:そうです。 ―因みにスガさんは大のプリンス好きじゃないですか。そんなスガさんはReiさんのギター・プレイにプリンスっぽさを感じて抜擢したんじゃないかな、なんてことを考えてみたんですが。 Rei:そうだったとしたら、めっちゃ嬉しいですね。 ―そんな話はしたことないですか? Rei:その話はしてないですけど、スガさんはJ-POPの世界のなかでもブラックミュージック、特にファンクに対する造詣が深くて。ブラックミュージックとJ-POPの融合って、すごく技術のいることだと思うんですけど、それを長年やってらっしゃる方ですからね。私もブラックミュージックをたくさん聴いて育っているので、何かシンパシーを感じてくださったのかなとは思ったりしました。ここのカッティングはプリンスのあの曲の感じでとか、ここはスライ・アンド・ザ・ファミリーストーンっぽい感じでとか、具体的に名前を出しながら、いろいろご指導をいただきました。 ―ところで最近のReiさんのライブを観ていると以前よりもお客さんの熱量が高くなっていて、それによってReiさん自身も開放され、一体感が生まれているという印象を受けます。とりわけ3月に渋谷クアトロで行われたRelease Tour 2024 “VOICE MESSAGE”のファイナルを観てそのことを強く感じたんですが、そうした変化はご自身も感じますか? Rei:ほかのアーティストのライブをいろいろ観させていただくなかで、自分は良くも悪くもお客さんとの距離があるほうのアーティストだなと自己分析してまして。自分のライブのお客さんは演奏に集中して観てくださる方が多く、お決まりの手振り身振りとか合いの手をみんなで入れるというような景色にはあまりならないんです。私自身、集中して圧倒されながら観るライブが好きなので、それはそれで正解だと思っています。でもそれなりにキャリアを積んできて、ファンダムを作っていくことも意識するようになりました。K-POPとか日本のアイドルの世界ではファンダムがすごく重要とされていて、ファン同士の繋がりも強い。そこで私のファンというひとつのコミュニティみたいなものをもう少し強化していったらどんなふうになるんだろうという好奇心が生まれたんです。 それと、RHYMESTERのライブを観ていて思ったんですけど、彼らは本当にお客さんと一体となるのが上手で、ステージの運び方も凄いんですよ。いくつもの曲がひとつの曲に思えるくらいのメドレー感でよどみなく進んでいって、この曲はどんなふうにノレばいいんだろうみたいなことを考える間もなく波に吞み込まれる。自分もこういうライブができるようになりたいなとは思いました。まだ試行錯誤の最中なんですけど。 ―一体感を生み出せるライブにしたいと思いながら臨むことが増えたということですか? Rei:う~ん。でもまだ自分のなかで答えは出てなくて。というのも、私はペトロールズを尊敬しているんですが、彼らはライブのときにいつも「好きなように楽しんでね」「ドリンクを取りに行きたくなったら行けばいいし」というようなことを言っていて。強要をしない。そういうアティテュードも私はすごく好きなんですよ。私も楽しみ方を強要したくはない。それを踏まえた上でのいいバランスが見つかればいいなと思っているところです。ひとりで観に来た人も、自分の居場所がここにあると思えるような安心感のあるいいバランスを探れたらいいなと思いながら、最近はライブをやっています。 ―実際、声を出して開放された状態で楽しんでいる人も、集中して静かに演奏を聴いている人もいて、そのバランスはどんどんよくなってきているように感じます。 Rei:ありがとうございます。 ―でもReiさん、最後の曲をやり終わると振り返りもせずにスタスタと歩いて一瞬でステージから去ってしまうところは相変わらずですよね(笑)。 Rei:あはははは。なんかこう、用が済んだのでサヨナラ!って感じにどうしてもなっちゃうんですよね。いろんなタイプの演者がいると思いますけど、私はどんな事柄でも終わったら後腐れなく颯爽と去るのがかっこよくて好きですね。メンバーもびっくりするみたいです。終わった瞬間に私がステージから消えてるから(笑) ―はははは。まあ、あれもまたReiさんらしいなと思って観てますけどね。