Reiが語る、人生の変革期にギターと真正面から向き合うことの意味
ギターは心の触手、抱きしめられる楽器
―では新作の話をしましょう。今回はギター・プレイにこだわった作品ということですが、前作『VOICE』を制作しているときから次はそういうものにしようと考えていたんですか? Rei:考えていました。歌とギターで対になる作品を出したいと思っていました。 ―昔から先を見て計画的なリリースをするタイプでしたよね。インディーのときには『BLU』『UNO』『ORB』と、しりとりみたいに文字の繋がったタイトルの3部作を出したり、そのあとも『CRY』『FLY』と対になる作品を出したり。 Rei:『スター・ウォーズ』好きなので、単体でも楽しめるけど連続だとより楽しめるみたいなものが好きなのかもしれません。 ―歌とメロディを重視した『VOICE』を作ったことで、ギターをフィーチャーした今作のイメージがより明確になったというところはありましたか? Rei:『VOICE』は自分にとって挑戦の作品でした。お客さんだったりスタッフだったりミュージシャンだったりが私のことを形容するとき、「ギターの子」みたいな感じで言われることがほとんどなんです。それは自分印みたいなことだから嬉しいことですけど、でも歌だったりソングライティングだったりにも私としては相当の拘りを持って作っているつもりなので、それがもっと伝わればいいなという想いはずっとあって。ある意味ではギターよりもソングライティングの幅の広さのほうが自信があるんです。だからそこをもうちょっとしっかり伝えたいというのが『VOICE』だった。とはいえギターの聴きどころも自分なりに追及して作った作品でした。でもやっぱりギターの音を欲しがっている人からしてみると、『VOICE』は物足りないところがあったみたいで。 ―物足りない、か。それはギュインギュインと激しいギターを弾き倒すReiさんを求めている一部の人ですよね。 Rei:そうです。シングルノートで歪ませて、どうだー!みたいな感じで思い切り弾いてほしいという人がいらっしゃって。私自身、ジミヘンもレイ・ヴォーンも大好きだから、そういうギター・プレイも好きだけど、でもギターはそれだけじゃない。だから優しかったり切なかったりという表現も追及してきたんですけど、それでもそうやってもっと激しいギターの音を聴きたいというフィードバックが来ると、自分が求められているギタースタイルはこれじゃないんだなみたいに、ちょこっと切ない気持ちにもなったりして……。 ―そうだったんだ。 Rei:もちろんポジティブなフィードバックもあったんですよ。でも私は基本的に天邪鬼だから、欲しがっている球を直球で投げるみたいなことは今まであんまりやってこなかった。それよりも幅を見せたいという気持ちがあったから。でも、「そんなに言うんだったら欲しいものをくれてやるよ」じゃないけど、そんなふうに半分怒ってるような感覚で直球を投げるということを一回やってみようかと。「だったらこれでどうだ!」みたいな。だから質問の答えとしては、確かに『VOICE』を作ったことで今回の作品のイメージやトーンがより明確になったところはありましたね。 ―『VOICE』のように歌とメロディに比重を置くとガーリーなReiが濃いめに出てきて、今作のようにギターを大フィーチャーすると「やってやろうじゃねえかよ」といった感じの強気のReiが出てくる、というところは実際ありますよね。それが面白い。 Rei:マニッシュというか、”女前”な感じがね。 ―やっぱりエレクトリックギターってそういう楽器だったりするんですかね。持つと勇ましくなるような。 Rei:そうなんですかねえ。今回は“ギターと私”というテーマを音楽だけじゃなくアートワークにも反映させているんですけど、ギターを持つと人格が変わるとかっていうのではなくて、一心同体なんだなってことは思いました。勇敢な日もあれば、愛情深い日もある。怒っている日もあれば、弱っている日もある。そういう自分の心の機微みたいなものを一番正確に表わせるものが、私にとってはギターなのかなって。おっしゃったように持つと勇ましくなるというところもありますけど、それだけではなくて、心の触手みたいな感じで自分の感情を一番なめらかに表現できるものではあるのかなと思います。 ―昔はよく、「オレのオンナはいい音出すんだぜ」みたいな感じでギターを女性のように扱うロックギタリストがいたものですが、Reiさんからするとギターは同性のイメージですか、異性のイメージですか。って、ジェンダーで分けるのもヘンですけど。 Rei:どうなんですかね。植物みたいにおしべもめしべもあるような感覚かもしれません。「ギターの好きなところは?」って聞かれると、私は「抱きしめられるところ」だと言っていて。身体との接点が大きいし、特にアコースティックギターだとサウンドホールが私と同じ方向を向いているので、自分に一番近い存在だと思えるし、言葉とかよりも本音に近い状態で表現ができる気がします。 ―「GUITARHOLIC」で歌ってますもんね。「胸の真ん中 空いた穴から 溢れる本音 聴いてほしい」と。「寂しがり屋の僕のそばに 抱きしめられる存在が必要です」とも。 Rei:そうなんです。 ―今作のアートワークは、まさにギターとReiさんが一体となっていて。Reiさん自身がギターになっているような写真もある。 Rei:そうです!身体に弦が張られてあって。 ―この撮影中、どんなことを考えていたんですか? Rei:今晩は親子丼を食べたいなとか、そんなことですかね(笑)。 ―ははは。ギターと一体であることが自然すぎて、特別なことは考えなかったと。 Rei:ロックギタリスト然とした威嚇するような表情よりかは、何を考えているのかわからないニュートラルな表情がいいかなとは思っていました。キッと眼光鋭くみたいなことではなく、ミステリーが残っているような表情というか。