「年間売上140円」シェアオフィスのお菓子で飢えをしのいだ女性社長が3年で「年商1億」まで会社を急成長させた逆転の発想
──「ひとつのボールを一緒に持つことがない」というのは、わかりやすいたとえです。しかも、それぞれ自分にないスキルの持ち主だから、全員が会社にとって欠かせませんね。 西さん:得意分野が違うため、役割分担が明確でお互いにリスペクトがあったことがよかったのだと思います。きっとひとりだったら起業にまで至っていなかったかもしれません。たとえば私の場合だと、お金回りに関する知識はまったくなかったですし、モノを作ることができても、それを広げていくノウハウがない。だからこそ3人で協力することの大切さをよくわかっています。
とはいえ、起業に向けて入念に準備をしたわけではなく、むしろ計画も何もないまま見切り発車のスタートでした。遠い未来の目標はあるけれど、そこに至るまでの地図はない。売上げ目標や経営計画も立てていませんでした。楽観的すぎるのかもしれませんが、「3人でやればなんとなるでしょ」と思っていました。
■初年度の売上は140円「お菓子で飢えをしのいだ」 ── 見切り発車というのは、たとえばどんなところでしょう? 西さん:3人でお金を出しあって100万円の起業資金でスタートを切ったのですが、アプリ開発のために1台30万円のMacを3台購入し、3畳ほどのシェアオフィスの手数料を払ったら、1か月目で資金が底をついちゃって。あとはみんなで貯金を切り崩したり、国からお金を借りたりして資金を工面しながら、その年に3つの観光系のアプリを開発しました。ところが、まったく売れなくて…。1年目の売上は、わずか140円だったんです。3人とも無給でしたね(笑)。
── その状況が続くと、さすがに不安になりませんか? 西さん:ただ、アプリの開発をしながら、新しいことを勉強したり、営業に回ったり、地方の観光協会さんに出向いてビジネスモデルの提案をしたりと、朝から晩までせわしなく動き回っていたので、「いまはビジネスが軌道にのるまでの準備期間」と思っていました。いざとなったら、それぞれがスキルを活かして副業をしながらアプリ開発を続けていけばいいよね、と。お金がないから、お腹が空いたらシェアオフィスにある無料のお菓子を食べて、ドリンクバーでエネルギーをチャージ(笑)。「売上1億円、上場」と、夢だけは大きく掲げていましたね。