中学が倒産、大学は入学を拒否。「日本にいるのに無国籍状態」からデロイトトーマツを経て起業【世界難民の日】
「私も役に立ちたい」立ち上がるメンバーたち
Robo Co-opはこれまで30人以上の難民やシングルマザーの支援を行ってきた。 ミャンマーで発生したクーデターの影響で国内避難民となり、Robo Co-opで1年間トレーニングを積んだメンバーが高度人材の就労資格を取得し、日本へ移住して仕事を始めたという好例も生まれた。 また、難民支援をするUNHCRに対して、難民メンバーが日頃の感謝の意を込めて、プロンプトエンジニアリングを教えるAI研修を実施した事例もある。 技術を身に付けて生活を自立させたメンバーたちはみな、口を揃えて「私も難民の人の役に立ちたい」と話す。 ガザからエジプトに避難したパレスチナ難民の姉妹と会議した際には、メンバーがみな口々に「ガザのために何もできていなくてごめんなさい」と言った。その様子を思い出し、金は目をうるませる。 「多くのメンバーが自分たちの生活にも困難を抱えていて、精神的にも経済的にも決して余裕があるわけでもない。それなのに姉妹を慮っていたんです。その言葉を聞いて、『なんて頼もしいんだろう』と思いました」 他にも姉妹に対して、メンバーが「あなたがガザから避難したことを、なにも後ろめたく思う必要はないんだよ」と声を掛けてケアをしている姿もあったという。 「社会を変える方法があるとすれば、それはgiveの精神を皆が持つことだと思うんです。 私が誰かにgiveし続けると、それを受け取った人は誰かにgiveし始めます。その優しい連鎖がつながるカルチャーが根付いたコミュニティを広げていきたいんです」 既に、Robo Co-opにはシリア、アフガン、パレスチナ、ウクライナ、ビルマ、ロヒンギャ、コンゴ、ナイジェリアといった多様な先輩コミュニティが広がっている。 パレスチナ難民の姉妹は、同じく難民の背景をもつアフガン女性の指導を受けて、オートメーションやAIのスキルを身につけた。彼女たちはRobo Co-opでのキャリアアップを目指し、さらなる自立と次なるパレスチナ難民にスキルを教える存在になることを目標にしている。 金が撒いたgiveの種は、着実に世界の各地で芽吹き始めている。
市川みさき