ゲーム画面から飛び出たようなリアリティ 『スト2』リュウの立体的なドット絵がすごい
制作の方法、色へのこだわり、造形に求めた高い精度
──明かせる範囲で制作方法について教えていただけますか? hirofus もちろんです。今回のリュウは実際のゲーム画面よりも解像度を下げることにしたので、YouTubeの動画から画面キャプチャーしたものをPhotoshopで32x16ドットに縮小し、トレースしてドットを打って下書きをつくります。 この下書きを参考に、Blenderで正方形のオブジェクトをドットに見立てて積み上げて大まかな形をつくります。その後、各オブジェクトのサイズ変更や組み替えによる造形で、モデリングデータを完成させます。 完成データをスライサーソフトでプリント用データに変換したら、3Dプリンターで出力。さまざまな後処理を経て、ガレージキットと同じ要領でプライマーを吹いてからペイントしました。ペイントにはシタデルカラーを使っています。 ──ペイントの際に色数は16色を意識されたそうですが、これはかつてゲーム機やPCで16色の制限があったことに合わせたのでしょうか? hirofus はい。できるだけ元のゲームの仕様にあわせた表現に近づけるように工夫しています。 リュウについてはスーパーファミコンに準拠して、キャラクターに使える16色(うち1色は透過カラー扱いで実際には15色)のカラーパレット。『ドラクエ3』の勇者はファミコン準拠で4色(うち1色は透過カラー扱いで実際には3色)のカラーパレット、といった具合です。 ──こだわりですね。そのほかにも制作でこだわられたこと、実現したかったことはありますか? hirofus 「どの角度から見ても、立体物として完成していること」と、「原作のドット絵を、できるだけそのまま立体にすること」の両立を目指しました。 ドット絵は二次元平面的に描写されるので、そのまま立体にしようとするとつじつまの合わないところが出てきます。 一方で、つじつま合わせの結果として、原作からかけ離れた立体物になってしまったら本末転倒です。制約や制限のなかで工夫して、理想の作品をつくろうと思いました。 ──理想を作品をつくるなかで試作を重ね、12体目で完成したんですよね。完成品までには具体的にどのような調整を加えたのでしょうか? hirofus 大きく2つのポイントがあります。1つは3Dプリントの精度です。3Dプリントの出力設定によって、データどおりにプリントできず失敗することがあります。腕や足だけ平べったく立体感がなかったり、あるいは全体的にゆがんでいたり、膨らんでしまったり。 2つ目はデータの精度です。ディスプレイ上のモデリングが良い出来に見えても、実際に出力して眺めてると「思った形となんだか違っていた……」ということがあります。 立たせてみると重心がうまくとれず倒れてしまったり。それらを解決するための調整をくり返しているうちに、いつの間にか大量に試作品をつくってしまいました。