<プーチンの訪中をどう見るか>習近平も会談したかった?中国が実は心配していること
「欧州は対ロシア宥和政策で失敗した」
時あたかも、欧州論壇では、欧州の従来型の対露政策は間違いだったという有力な議論(“Les Aveuglés ;Comment Berlin et Paris ont laissé la voie libre à la Russie”Sylvie Kauffmann著、筆者訳「目先が見えない人々:如何にして独仏はロシアの勝手気ままを許したのか……」)が出てきた。著者シルビー・コフマン女史はルモンド紙の著名な外交記者である。 この本は独仏両国の首脳がプーチン大統領には長く宥和政策をとってきた結果、同大統領の専制的ロシア支配を助長してきたと論じている。これは非常に重要な問題提起であり、欧州では大きな議論を引き起こしている。 当然新しい対露政策はどうあるべきかが模索されていくだろう。私見では新しい対露政策は必然的にロシアを西欧民主陣営に引き込むことを目指すはずだ。
「ロシアを引き込む」という欧州の同意
欧州民主勢力がポスト・プーチンのロシアを西欧民主主義世界の一員として取り込もうとするなら、成功する可能性はもちろんある。まず、ロシア国民の中にもそれを望んでいる人がいるからだ。 ロシア人経済学者でパリ高等政治学院のセルゲイ・グリエフ教授は、ハーバード大学での講演でそれは可能だと論じている(『「第二次トランプ大統領」に備え日本や世界ができること プーチン政権継続で波乱と混乱の時代か、それとも新しい<欧露民主同盟>か?』)。欧州議会もロシアの民主化はできると決議した。2021年9月欧州議会の外交委員会はロシアの国内の圧政と対外的侵略は断固阻止するが、ロシアは民主化できると宣言したのだ(’MEPs call for new EU strategy to promote democracy in Russia’)。
要するにロシアの民主化は欧州諸国の総意だということだ。既に数多くの米欧の有力な論者、専門家が権威ある論壇でポスト・プーチンのロシア民主化論を論じている。 筆者の調査ではここ1~2年だけでも30件近くある。もちろん、ロシアは多民族国家だし、ロシア全域が一つの民主的イデオロギーでまとまるかどうかという問題はある。単純化は禁物だが、ポスト・プーチンのロシアが向かうべき大きな方向性については欧米の政策論壇で強い合意があると見てよい。