<プーチンの訪中をどう見るか>習近平も会談したかった?中国が実は心配していること
ロシアのプーチン大統領が5月16日、中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。プーチン大統領が5期目に入って初めての外国訪問先として注目されているが、この背景には「中国が今や隣国ロシアの将来を気にしている」ことがあると考えられる。 ウクライナ戦争の帰趨は? プーチン政権の行く末は? ポスト・プーチンのロシアは一体どこに向かうのか? これらの点に中国はことさら強い関心を持っているはずだ。習主席はプーチン大統領を北京に招いてウクライナでのロシアの勝利とロシアの将来に見通しをつけたかったに違いない。 それには理由がある。地続きの友邦ロシアが将来どうなるのか? それが中国の利害に直接響く重大な問題だからだ。 仮にプーチン氏と同じ系統の専制的強権がモスクワに誕生するならとりあえずは安心だ。しかし欧米が政策的な跳躍を図り、ポスト・プーチンのロシアを西側の友好国にしてしまえば、事態は中国にとって非常に深刻だ。 ユーラシア大陸、すなわちリスボンからウラジオストクまでが自由民主の帯になってしまうからだ。これが中国の最大の懸念だ。 ロシアが西側の友好国になることなどありえるのか? 本稿では欧米で交わされている議論を紐解き、ロシアの民主化の可能性、仮に民主化が実現した場合に中国はどのように動くかについて検討し、今回のプーチン訪中をどう見るかの論点を提示したい。
トランプ思想が欧露の接近を生む
欧州側にはロシアを友好国として抱き込む強い必然性がある。それはトランプ前大統領に欧州が北大西洋条約機構(NATO)の関係で「こっぴどく」痛めつけられたあの経験(『「第二次トランプ大統領」に備え日本や世界ができること プーチン政権継続で波乱と混乱の時代か、それとも新しい<欧露民主同盟>か?』)に由来する。 「もしトラ」が現実化している以上、欧州は安全保障面で米国依存を減らす必然性がある。一つの方法はロシアを欧州の友好国にしてしまうことだ。そうなるとNATOの存在理由が無くなる。そして米国依存は減る。 欧州側はポスト・プーチンのロシア国民に働きかけ、対話し、あらゆる支援を提供し、共に繁栄する自由ユーラシアの建設を誓約できる。ロシアの文化や伝統を尊重し、希望と友情とロシアが経験したことがない成長と繁栄を保証する。 そういうメッセージを届けることができる(’What Could Come Next? Assessing the Putin Regime's Stability and Western Policy Options’)。その方が欧州にとって経済的実利もあり、賢明で、優先度の高い選択肢だ。 米国主導のNATOのような軍事同盟に今後長期間依存していくより、ロシアを西欧同盟の内懐に引き込んだ方が外交的に余程賢明だ。いずれ必ず到来するポスト・プーチンの時代になれば、西欧社会は必ずそうするだろう。中国の政策当局者が危機感を持つ所以だ。