「ブラックホール」で“時が止まる”は本当なのか?何でも吸い込む“”天体のラスボス"「ブラックホール」の7つの不思議を東大宇宙博士が解説
⑦ ブラックホールのなかに「別の宇宙」がある! ……かも! ■表面がなく、一度入ると脱出不可能 【ブラックホールの「七不思議」①】天体なのに、「表面」がない ブラックホールは天体の一種なので「大きさ」や「重さ」がありますが、地球のように人が降り立てる「表面」があるわけではありません。土星や太陽のようにガスでできていて、表面がふわふわしている、というわけではありません。 天体は、重力によって物質が集まってできています。地球や太陽の場合、重力によって集まろうとする力と、内側から抵抗する圧力がバランスして形が保たれています。
しかしブラックホールの場合、内側から支える力が足りず、中心のミクロな1点にすべての物質が集まってつぶれている、という状態になっているようなのです。 この点のことを専門用語で「特異点」といいます。 ブラックホールがこの宇宙に存在することは、数々の観測事実から間違いありません。ただ特異点では既存の理論が破綻してしまうため、実際にはどんなふうに物質が集まっているのか、つまり、ブラックホールの穴の中がどうなっているのかは、まだわかっていないのです。
そこで現在、新しい理論(「量子重力理論」)をつくる研究が進められています。 【ブラックホールの「七不思議」②】一度入ると、二度と抜け出せない ブラックホールには天体としての「表面」はありませんが、「ここから先はブラックホールです」という「境界」はあります。その境界がブラックホールの「大きさ」を表しています。 境界とはいっても、「立入禁止!!」のようなわかりやすい目印があるわけではなく、もし、うっかり侵入してしまうと、二度と抜け出すことはできません……。
いったん境界を越えると、宇宙で最も速い光でさえも逃れることはできないのです。 正確にいうと、光が逃れられないのは、「空間がゆがんでいるから」です。じつは、ブラックホールのまわりでは、空間が強烈にゆがんでいます。 空間が曲がっていると光の進路も曲がります。ブラックホールの境界を越えた光は、「ゆがみまくった空間に閉じ込められて脱出できなくなってしまっている」のです。 困ったことに、ブラックホールから「光(電磁波)」が出られないということは、何の「情報」も届かないことを意味します。もし、ブラックホールに入って何か有力な情報をつかんだとしても、残念ながら外に伝える術はありません……。こうした理由からも、ブラックホールの穴のなかの様子は「わからない」のです。