新ルヴァンがもたらした2つの効果 ホテルは満室…期待できる「リアルエンタメ」での地域活性化【コラム】
鳥取はクラブ史上4番目の入場者数
加えて言うと、興行的な効果も大きかった。この日のAxisバードスタジアムに集結した観客は7677人。これはクラブ史上4番目の記録だという。 このうち浦和サポーターは約1500人。浦和OBの岡野雅行GMは「試合はもちろんのこと、レッズサポーターが遠い鳥取に乗り込んで、熱気あふれる応援をする様子や雰囲気を鳥取の人たちが見ることだけでも意味がある。本当に久しぶりにリアルエンタメを見た」と興奮気味に語っていたが、サッカー文化があまり根付いていない地域に日本一の熱が伝わるならば、下部チームのホーム開催という開場設定も有意義なものになる。 もちろん観客が入れば、クラブの収入も増える。最近の鳥取は2000人台の試合が多いが、3月24日のカマタマーレ讃岐戦は934人と大台を割り込んでしまっている。これはクラブにとっては死活問題に他ならない。集客力あるカードが増えれば、経営的なメリットも大きくなるのだ。 同日の鳥取は市街地のホテルが満員に近い状況で、東京~鳥取便の往復便も混雑していた。多くの人が訪れれば、地元に経済効果ももたらされる。過疎地の鳥取にとっては、こういったビッグカードは地域活性化にも直結する。わずか1試合ではあったが、ガイナーレ鳥取含め、町全体がルヴァン方式変更の恩恵を受けたと言っていいかもしれない。 浦和の5月22日の3回戦はVファーレン長崎戦。次回も1000人規模の熱狂的サポーターが長崎を訪れるのではないか。そうなると今度は長崎の町を赤黒のシャツを着た面々が占拠することになるかもしれない。そういうサッカー熱が全国各地で感じられる状況になれば理想的。今後の下剋上を含め、ルヴァンの動向を注視していきたいものである。 [著者プロフィール] 元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。
元川悦子 / Etsuko Motokawa