若者は本当に映画を観ないのか? 若年層から爆発的人気を誇る“縦型ショートドラマ”、作り手に訊く成功のワケ【前編】
若年層を中心に爆発的な人気を誇る縦型ショートドラマ。「#ショートドラマ」が付いた動画の総再生回数は727億回を超え、『TikTok上半期トレンド大賞2024』では大賞を受賞するなど大きな話題を呼んでいる。そこで今回は、総再生回数11億回を誇るこねこフィルムへの取材を敢行。そこにあるのは、国内の映画業界を盛り立てたいという熱い思いだった。(取材・文:司馬宙)
既存の映画業界への疑問が出発点
―――三野龍一監督は、元々商業映画を制作されていたと伺いました。縦型ショートドラマに参入されたきっかけを教えてください。 龍一「一番は既存の映画業界の体質への疑問ですね。2023年に『近江商人、走る!』という商業映画を制作したんですが、その時に、宣伝の方法が今の時代に全く合ってないな、と痛感しました。 だって、地上波のテレビに数千万円つぎ込むんですよ。広告を打ったところで、実際にその広告を見るのはせいぜい数百万人で、その中でわざわざ映画館に足を運ぶ人となると、更に限られてくる。 それだけ無駄なお金が出るんであれば、キャストやスタッフにお金を回してほしいと。そういう思いから、こねこフィルムを立ち上げました」 和比古「あとは、映画業界の既得権益ですね。僕は設立当時、マーケティングの仕事をしていたんですが、複数の広告代理店や配給会社が、制作費の中抜きをしているという実態をよく耳にしていました。 そんな中、中国で縦型ショートドラマが話題になっているという話を耳にしました。で、映画館を抑えなくても自分たちの作品を発信できるし、試行錯誤も簡単にできるんじゃないか、と気づいたんです」 ―――では、こねこフィルムの場合は、元々縦型ショートドラマがやりたいというわけではなかったんですね。 和比古「そうですね。縦型ショートドラマはあくまでも、クリエイティブの強さを世の中に伝えていくための“手段“という位置づけで、軸足は映画に置いているつもりです」